夏の暑さも少しずつ和らいで、秋の気配が漂ってきました。自転車でサイクリングするのにもちょうどいい季節ですね。

 今なお要所に歴史を感じさせる中山道。かつての難所だった峠を越えて。宿場から宿場へとつなぐ旧国道、鳥居峠のグラベルライドに出かけてきました。

■いい道見つけたかも! その名は「鳥居峠」

ハイカー用に整備された“自然歩道”の他に旧国道「明治新道」がある鳥居峠

 自転車に乗って気軽に楽しめるサイクリングですが、車道(通行可能な歩道を含め)は自転車にとってあまり快適ではないところも多いです。とくに幹線道路では車からのプレッシャーが強く、そもそも道の端は荒れていて走りにくくハラハラします。一方、いざ車を運転していると自転車の存在は気がかりです。「自転車専用道路」なるものもありますが、それもわずか。とにかく通行量が多い道では、自転車も車もお互いに不幸な感じがしてなりません。

 「どこかサイクリングにいい道はないか」 そう思いながら地図を探るのが日課になっています。ある日、旧中山道「鳥居峠」の存在に目が留まりました。“鳥居”の名を冠する峠は全国津々浦々にありますね。筆者の住む長野県でもいくつか思い浮かびます。しかもハイカー用に整備された“自然歩道”の他に旧国道があり、今も通行できる! どうやら道中は未舗装の砂利道のようです。

薮原宿にて。グラベルバイクは、一見すると太いタイヤを履かせたロードバイクにも見えます

 今回のサイクリングには“グラベルバイク”を使いました。自転車の一種ですが、比較的新しいカテゴリーで耳慣れないかもしれません。

 グラベルロード=砂利道、未舗装の道を指します。グラベルバイクは、ざっくりと説明するとロードバイクのような車体に、太くてゴツゴツしたMTBみたいなタイヤを履いているイメージです。舗装路でも未舗装路のグラベルロードでも快適に走行できる自転車といったところでしょうか。乗り方次第ではどこでも走れてしまう自由さがあります。

■中山道の峠越え! 鳥居峠の極上のグラベルロード

中山道、奈良井宿。かつての宿場町は今は観光地として人気です

 今回のサイクリングの起点は中山道、奈良井宿から鳥居峠を越えて薮原宿へと向かうルートです。今は国道19号線「(新)鳥居トンネル」で通過するのが当たり前ですが、「信濃路自然歩道」となっている旧中山道と明治時代に初めて車道として開通した「明治新道」。さらに封鎖されていますが「鳥居隧道」もあります。歩道を自転車で走るわけにはいかないので、明治新道を選択しました。

 8月下旬、昼前の奈良井宿での気温は30℃。乾いた空気はそれほど暑さを感じさせません。賑わう宿場町に背を向けて町の外れから狭い急坂を登っていきます。少し上がると道幅はむしろ広がり、植林のなか砂利道へと変わりました。

山側には古い石垣が苔むして。木漏れ日のなかペダルを漕いで走ります

 蝉時雨の向こうから、国道を走る車の音が聞こえていましたが、それも標高1,100mを超えたあたりまで。やがて辺りを静寂が包み、木々の葉が擦れる音、わずかなせせらぎの音が聞こえるようになりました。細かな砂利が敷き詰められたグラベルロートは快適そのものです。多少の轍はあるものの、大半は傾斜も緩く(4〜5%程度)でリズムよくペダルを回し続けることができました。

峠のそばには馬頭観音。馬に変わって自転車で。でも僕は1馬力もない……
緑に包まれた「峰の茶屋」。この先が鳥居峠です

 馬頭観音を過ぎれば歩道に合流、すぐに「峰の茶屋」があります。古びた水場は涸れていました。ひと休みしたら、いよいよ鳥居峠の“大分水嶺”です。一見するとただの水平な道ですが、ここで日本海へと注ぐ信濃川水系と太平洋へと向かう木曽川水系と、水が流れていく先が違います。渓流釣り好きの筆者にとって「ヤマメか、アマゴか……」。ここが棲み分けの境であると、しみじみと感じ入ります。。

※非常に見た目が似ている渓流魚、ヤマメとアマゴ。ヤマメの生息域は日本海側と伊豆半島を境界として東の太平洋側。アマゴは伊豆半島から西の太平洋側とされています。

砂利は細かく、その隙間は枯れ落ちた松葉が埋めてくれていて絨毯のよう

 この先、歩道を辿れば鳥居峠の名前の由来となったとされる石の鳥居などがある「御嶽神社」や「丸山公園」があるようですが、自転車を置いてビンディングシューズで歩くのが億劫でパスしました。

 歩道と分かれ、峠から南西方面へ。その先の道は一層快適になりました。砂利は細かく、その隙間は枯れ落ちた松葉が埋めてくれていて絨毯のよう。コーナーは緩やかにバンク状になっており、極上のグラベルロードが待っていました! 軽やかにコーナリングしながら駆け抜ける森。心地よくて脳みそが蕩けそうでした。

 しかし忘れてはいけないのは、ここが車道で一般車両が通行するということです。耳を澄ませながらスピードは出さないように慎重さを保つ必要があります。実際は軽トラ1台しか出会いませんでしたが……。あとはカモシカが突如現れて、しばらく追走することになっていました。なぜか数組の歩行者も見かけました。いずれも海外からのゲストのようでしたが、あえて遠回りルートを選んでいるのでしょうか……。