その日、筆者はキスを釣りに堤防を訪れていた。仕掛けを投げ込み、竿を置いて別の作業をしていたとき、置き竿にしていた投げ竿が大きく傾き、海に持っていかれそうになった。
あわてて竿を掴んで確保すると、竿先が突っ込むように大きく曲がり、リールを巻こうとした次の瞬間にはドラグが逆回転した。 一進一退の攻防が10分ほど続いただろうか。本格的に釣りを始めてまだ1年の筆者だが、間違いなくこれまでで最高の引きだった。大興奮で水面まで何とか引き上げ、魚の顔が水面から出た瞬間に固まった。サメであった。
想定外のゲストはいつも突然やってくる。サメ、エイ、ボラといった本命以外が釣れた時どのように対応すべきか。 今回の筆者の相手は白い斑点が散らばったホシザメだった。この一匹から学んだ鉄則を5つにまとめて紹介したい。
■鉄則① 無理に抜き上げず、迷ったら仕掛けを切る
まずは落ちついて冷静になることが大切だ。想定外の大物が掛かると慌てがちだが、足場の高い堤防では強引に抜き上げようとするとトラブルが起きやすい。
筆者が使用していたのはオモリ10号にキス針2本という軽めの仕掛け。竿はオモリ20号対応の投げ竿、リールはスピニングの4000番だ。対象魚20㎝を想定したキスなら余裕だが、大物を抜き上げるには無理があった。
抜き上げに失敗すると、糸が切れて仕掛けが顔に飛んでくる恐れがあるほか、ロッドを折ってしまう可能性がある。また体勢を崩して落水するリスクも考えられる。潮位にもよるが、堤防の足場は海面から大きく離れていて高いため「無理かもしれない」と感じたら、自らラインを切る決断も必要だ。釣りあげることより、自身の安全を優先してほしい。
■鉄則② タモで取り込む(周囲への協力要請も)
水面まで寄せた大物を堤防の上まで上げるには、タモ(玉網)ですくうのが正解。しかしこの日タモを持参していなかった筆者は、どうしようかと思考停止状態に陥った。ちょうどその時に通りがかりのおばあさんがタモを貸してくれたのだ。
さらに付近で釣りをしていた青年が気づいて取り込んでくれるという、たまたまが重なり、周囲にいた人々の助けで釣り上げることができたのだった。
高い足場から海面に浮かせた魚をすくうには、5m超の伸縮式のタモが重宝する。堤防釣りでは持参したいアイテムの一つ。もし手持ちのタモがなければ、予想外の大物が掛かった際は周りに助けを求めるのも対処の一つとなる。
■鉄則③ 釣れた魚の口元(歯)に手を近づけない(針外しは慎重に)
魚を釣りあげたら、釣り針を外す必要がある。この時に気をつけたいのが口元である。筆者が釣ったホシザメは、サメの中でもおとなしい性質で、歯は貝や甲殻類をすりつぶす臼歯状であった。
一方、堤防でよく釣れるドチザメは鋭い歯を持つタイプだ。「サメ」と言っても危険度は種類によって違ってくる。また、サメ以外の外道には背ビレや胸ビレに毒を有するのもいるので要注意である。
ホシザメがおとなしいタイプであることは後から知った事実だ。釣れた時は何のサメか分からず戸惑っていた。種類が判別できないうちは「サメ=口元は危険」と考えて対応するのが安全。釣り針を外すためには魚の口へ手を近づけなければいけないし、暴れた拍子の事故もある。素手で触るのは言語道断である。