2025年、南アルプス・光小屋の管理人である小宮山は、シーズンイン直前に怪我をしてしまい、とうとう山小屋に上がれないままシーズンを終えました。

 今回は、そんな管理人不在の光小屋を数珠つなぎで支えてくれた、バリエーション豊かなメンバーについて。

 時はまだ、私がアキレス腱断裂する前の話しにさかのぼる。今シーズンは私と初年度から手伝ってくれているベテランの高橋くん、そしてアルバイトさんを1人加えて、3人体制でやろうじゃんか! と決め、初めて公にスタッフの募集をした。「予定は未定」が合言葉になりつつある光小屋だが、まさか自分が不在で光小屋を開ける、そんな日が来るとも思ってもいなかった。

初めての著書「私、山小屋はじめます」をリリースしたのも2025年でした

■急遽、管理人不在! の小屋開けを支えてくれた年上のお二人

7月の三人衆。小屋開け前のトイレ掃除のためにフル装備

 まずは、小屋開け作業から入ってくれた渡辺さんについて。10数年勤めた医療秘書の仕事から転職しよう、というタイミングで1か月やってきてくれました。じつは、当初は山小屋で働きたいと考えていいたわけでなかったらしいけど、「なにか普通に仕事を続けていたらできないことがしたい!」と思い立って、連絡をくれたそうだ。その気持ち、わからなくもない。なんとも正直な理由だ。

内容は変更となりましたが、なんとか食事提供できました!

 もう1人は、25年間金融機関で働き、早期退職された中さん。セミリタイア後の1年間は山登り中心の生活をしており、日本百名山達成まで、残すは光岳と奥穂高だけとのこと。まだ光岳は登ってないし、こじんまりとした光小屋なら働くにはいいかも! と連絡をくれたのだった。

 中さんは、長らく営業で人事も担当していたという。初めて面接をする私と、面接官だった中さん。「面接って、こんな感じで大丈夫ですかね?」と思わず聞いてしまい、「大丈夫でしょう」とお墨付きをもらった。もちろん、あなたは合格です。

 この2人に、初年度から手伝ってくれているベテランの高橋くんを加えた3名で、いざ新体制の光小屋はスタートした。

 山小屋勤務は、山で暮らせるけれど歩きに出かけることはできない。いい時期や時間帯こそ、仕事が忙しいのが山小屋あるあるだ。特にスタッフが限られる小さい山小屋では、「明日から天気が良さそうなので歩きに行きたい」というのに対応することは難しい。登山好きが山で働くには、ちょっと酷かもしれない。とはいえ、登山者と違って、明日も明後日も山にいられるメリットはある。

 ちなみに、渡辺さんは勤務期間を終えた後、思う存分、南アルプスを歩きまくったらしい。