南アルプス・光小屋の2025年シーズンの営業は、7月1日から9月30日までに変更となりました。予約はオンラインから、受付を開始しております。
年々寒さが苦手になってきた私、最近は近所の温泉が拠り所です。早くもおばあちゃんみたい。今回は山小屋のお風呂事情を紹介します。

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■初めて働いた山小屋でのお風呂&行水体験
山小屋で働いていると、「山小屋にお風呂はあるの?」「どれくらいの頻度で入ってるの?」と聞かれることがある。お客さんには公開していないけれど、従業員用にお風呂やシャワーが整備された山小屋は多い。
私が働いていた当時の鳳凰小屋では、お風呂に入れるのは1週間から10日間に一度だった。水が豊富な小屋だけれど、沢水を薪で沸かすので時間がかかる。当然、薪も限られていて頻繁には入れない。浴槽の中のお湯を桶にとって、多めの水で薄めて大事に使いながら体を洗ったっけ。次の人のことを考えると、のんびり湯船に入る気にはなれず、なぜだか緊張した。
オーナーは夜になって仕事が終わったら、もう一度、ローソクを1本灯しながら入っていた。今ならわかる。仕事を終えてあとは寝るだけの夜のお風呂、めちゃ気持ちいいわ。

湯に浸かれるのは稀で、鳳凰の日常ではもっぱら行水だった。外作業をしたり歩荷をして汗をかいた後「冷える前に行水に行っておいで」と時間をもらう。夏でもキンキンに冷えた南アルプスの天然水を、「ひい〜」と静かな悲鳴をあげながら豪快に浴びる。躊躇してはならない。小屋ではこの行為を、水浴びというより、行水と呼んでいた。
真水で体を清めてスッキリした後、しばらくすると体がぽっぽと温かくなってくる。そして「炬燵に火入ってるよ〜」とオーナーがかけてくれる一言が、体と心をほぐしてくれた。
■他の小屋のお風呂事情

振り返れば、お風呂は小屋によってさまざまだった。
コロナ下で働いた白山室堂では、トイレ掃除をした日はすぐにお風呂に入らせてもらえたし、直後に洗濯もできた。感染症が流行った年でもあり、できる限りリスクを減らそうと考えてくれたのだ。おかげで清潔な体で仕事に取り組むことができた。
冬の黒百合ヒュッテでは、1週間に一度、渋の湯(渋御殿湯)に下りる。温かい湯を求めて歩く森の景色、湯上がりの後にいただく熱いお茶、私一人しかいないのにストーブをつけてくれる優しさ。その全てに心も体もリフレッシュ。そして、また雪の森を歩いて山小屋に戻る。湯上がりの森歩き。これもまた贅沢な時間だった。
北アルプスの剣山荘では毎日シャワーを浴びた。ここは宿泊する登山者もシャワーを使うことができる。同時に3人が使用でき、親しくなった同僚と今日の出来事をあれこれ話して笑いながらシャワーを浴びた。合併式浄化槽になっていて、排水を綺麗な水にして山に返している。奥秩父の金峰山小屋ではサワラ材のお風呂。めちゃくちゃ気持ちよかったな〜。