長かった夏が終わり、10月後半から一気に気温が下がって山の紅葉もだいぶ本格化してきました。色づきの標高ラインはだいぶ下がってきて、2,000mを切ったようです。
そこで、今週あたりに紅葉がちょうど見頃を迎えそうな1,000m代後半の山の中から、首都圏からのアクセスが良く、ビギナーでも手軽に歩けて、紅葉も絶景も楽しめる。しかも有名過ぎない、という贅沢な山を一座、紹介します。
■周囲の百名山に隠れがちな名峰
紹介したいのは、山梨県にある標高1,713mの小楢山(こならやま)です。奥秩父山塊の南部にあり、牧丘町や山梨市の市街地から見上げると一番手前に位置するという立地的な理由から、山頂から抜群の展望が魅力の山です。
また、世界遺産を含む、数々の素晴らしい禅庭を手がけた禅僧・夢窓疎石(むそうそせき)が修行を積んだ山としても知られています。その影響か、山中にはコナラをはじめとする広葉樹とカラマツなどの針葉樹がバランス良く混じり合い、巨岩、奇岩が点在していたり、突然展望の開けるポイントがあったりと、天然の庭園のような美しさと驚きを内包しています。
金峰山、瑞牆山、甲武信岳など、周辺の百名山に隠れがちな存在ですが、短いルートに山登りの楽しみがギュッと詰まった隠れた名峰と言えるでしょう。とくに、山が色づき始める今の時期は、一年の中でももっとも歩いてみていただきたい季節です。
■山頂まで1時間半、往復で2時間半のお手軽ルート
登山口はいくつかありますが、山頂の北側に位置する焼山峠から登るルートが一番人気です。トイレや水道を完備した駐車場から、わずか1時間半で山頂に辿りつくことができ、往復で2時間半ほどの手軽なハイキングルートです。
ルート上にはとくに危険箇所や急坂はなく、ハイキング初級者でも安心しておすすめできます。もう少し歩きごたえやスリルを求めるならば、1時間ほど追加して幕岩と呼ばれる巨岩(上に登れて、展望良し)までの往復を加えるのも選択肢です。
■紅葉のピークはこれからが本番
取材陣が10月の4週目に訪れたところ、山の季節は秋に変わり始めている段階でした。
道中、ヒトツバカエデが真っ黄色に色づいていたりしましたが、ミズナラやコナラ、カラマツの紅葉は今週、来週あたりが見ごろになるかなといった具合でした。
地元の登山者によれば、例年10月末くらいがちょうどいい時期だけれど、今年は昨年同様、少し遅れ気味とのこと。山頂からの景色は、これから寒くなり、空気が澄んでくるとさらに良くなってくるそうです。
■都内から2時間ちょいでアクセス可能
都内からは道が空いている時間なら、2時間ちょいでアクセスできます。公共交通機関の場合、塩山駅から大弛峠行きのバス(予約制)に乗り、柳平で降りてから焼山峠まで歩く方法もあります。しかし、例年バスは6月から10月までの土日祝日限定の運行なので、これからの時期のアクセスはマイカーか、タクシーに限られます。
きっと余裕を持って下山できるので、麓の牧丘町や勝沼でフルーツを買ったり、ほうとうを食べたり、のんびり温泉に浸かってから帰る時間も確保できるはずです。ぜひ、帰り道も含めた山行計画を立てて、秋の山旅を楽しんでください。