■いよいよ本格登山。長い登りを経て、唐松岳へ
八方池から先、唐松岳へはいよいよ本格的な登山道となる。八方池から唐松岳山頂までは約2時間40分の道のり。尾根沿いの開けた登山道で、左側は白馬三山、右は五竜岳(ごりゅうだけ)に鹿島槍ヶ岳(かしまやりがたけ)を望め、後立山連峰の名峰たちを眺めなら歩けるのが気持ちよかった。
筆者が訪れた時はマイナス3℃ほどで、水たまりには薄い氷が張っていた。しかし行動中は暑くなり、汗もかく。ウェアの脱ぎ着でこまめな調節をしていたが、顔や手は冷えるため、グローブやネックウォーマーが役立った。
八方池から約1時間、丸山ケルンを経由して到着したのは扇雪渓(おうぎせっけい)だ。扇雪渓は山腹にあるすり鉢状になった場所で、休憩できるスペースがあるため、山頂を目指す前にエネルギー補給と呼吸を整えてから出発しよう。
全体を通して登山道は整備されている箇所が多く、危険を感じるような場所はないが、扇雪渓からは山頂に近づくにつれて道幅が狭くなっている箇所があるため注意したい。
■「北アルプス」の主役たちがズラリ! ご褒美の大絶景
八方尾根を登り詰め、稜線へ出ると唐松岳頂上山荘がある。そこで待っているのは北アルプスの主役、名峰の絶景だ。剱岳(つるぎだけ)に立山三山、五竜岳、白馬三山など、いずれも日本百名山に名を連ね、登山者にとって憧れとも言える山々だ。
唐松岳頂上山荘から唐松岳山頂まではまだ25分ほどかかるが、絶景を楽しみながら登ればあっという間だ。
山頂から正面には「雪と岩の殿堂」と称される剱岳、霊峰としても知られる立山、北側には雄大で山肌が白く見えるのが特徴的な白馬三山。そして南に目を向けると迫力満点の五竜岳が控えている。どこを見ても飽きない景色が広がっているため、時間の許す限り満喫したい。
筆者が訪れた10月初旬はまだ降雪はなかったが、北アルプスの10月は秋も終盤、冬へと近づく季節。防寒着をしっかりと携帯し、冠雪はなくとも凍結箇所に備えてチェーンスパイクなど滑り止めを用意しておくと安心だ。
夏の終わりすら感じられないほど暑い日が続く下界からは想像もできないくらい、急ぎ足で冬が近づいている北アルプス。雪で覆われる前に北アルプスの主役たちを堪能しに唐松岳へと出かけてみよう。
【八方池山荘からのピストンルート】所要時間
八方池山荘(0:00)→ 八方池(0:57)→ 扇雪渓(1:56)→ 唐松岳(3:31)→ 唐松岳頂上山荘(3:55)→ 扇雪渓(4:56)→ 八方池山荘(6:24)
歩行距離:約9.7km
累積標高差:登り 1,018m、下り 1,019m
合計所要時間:6時24分