■カールを彩る紅葉! “南アルプスの女王” 仙丈ヶ岳

森に差し込む朝日のなか、ゆっくりと尾根を辿っていきます

 優雅で美しく女性的。スケールの大きなカール群が魅力の“南アルプスの女王”と称される仙丈ヶ岳は標高3,033m。ダイナミックな景色と稜線歩きが楽しめます。

 出発前、星は見えていましたが、徐々に雲が広がってきている様子。それでも樹林帯を歩いていると、ときおり朝の光が差し込んであたりの景色を輝かせてくれます。

標高が上がるにつれ、広葉樹の割合が増えていきます。背後は前日に登った甲斐駒ヶ岳
錦繍の森。そのなかにひっそりと佇む、馬ノ背ヒュッテ

 六合目から小仙丈ヶ岳あたりの標高で、ダケカンバの黄色が帯のように広がっています。対岸に見える「馬ノ背ヒュッテ」はその森に抱かれるようでメルヘンチックで印象的でした。

北沢峠を挟んで北東方向。前日に登った甲斐駒ヶ岳のルートが一望できました
六合目から七合目の間、斜面の途中にナナカマドの密集地帯がありました
小仙丈ヶ岳からは「小仙丈沢カール」の眺めが素晴らしい。気持ちのいい尾根歩き
富士山、北岳、間ノ岳。日本の高峰が標高順にきれいに並んでいます

 小仙丈ヶ岳からは「小仙丈沢カール」の眺めが見事。ひと登りすると仙丈ヶ岳の山頂直下の「藪沢カール」が草紅葉で彩られている様子が見えます。カールの底にある「仙丈小屋」あたりは、ナナカマドの赤が艶やかです。左手方向に目をやると、富士山、北岳、間ノ岳が、甲斐駒ヶ岳から見るよりきれいに並んでいました。

仙丈ヶ岳山頂から見下ろす藪沢カール。その底にある千丈小屋

 時計回りにカールの縁を辿っていきます。途中まで無風で快適そのものだったのですが、山頂に近づくにつれ、急に風が吹き出して冬が近いことを感じさせました。

 防寒具はしっかりと用意して。手袋は厚手のものも用意したり、首から頭部を保温できるフード付きのジャケットやネックゲイターがあるといいでしょう。

 この日は日差しはあまりなかったのですが、曇り空の下、見る紅葉は晴天の輝くような煌めきや青空とのコントラストの派手さはないものの、しっとりとした色が艶やかで、落ち着いた美しさがありました。

馬ノ背の尾根上から仙丈ヶ岳を振り返ります。緑の山肌に散らばる紅葉の彩りが鮮やかでした

【今回のルートと所要時間】北沢峠(こもれび山荘) 05: 30 → 二合目 06:20 → 六合目 7:50 → 小仙丈ヶ岳 08:40 → 仙丈ヶ岳 09:50/10:10 → 千丈小屋 10:30 → 馬ノ背ヒュッテ 11:15/11:50 → 大滝ノ頭 12:20 → 北沢峠(こもれび山荘)13:30 
※ 二合目までは上りは巻道ルート、下りはトイレ横の登山口へと続くルートを使用。どちらも歩きやすく快適な登山道でした。

 標高約2,000mの北沢峠から登る両山とも3,000m級の高山です。どちらも六合目あたりまでは樹林帯のなかで風雨からも守られていますが、その上は遮るもののない場所となります。

 今回のルートでの標準的なコースタイム(休憩時間を含まない)は、甲斐駒ヶ岳は約7時間30分、仙丈ヶ岳は約7時間ですが、休憩を入れて10時間以上かかる登山者も多くいます。日に日に暗くなる時間が早まるため早出は厳守、天気以外にも自身の体調ともよく相談して、少しでも不安を感じたら早めに引き返すなどの判断も大事ですね。