10月に入り一気に季節が進み、涼しくなっている地域も多いのではないでしょうか。

 山岳地帯はもうすっかり秋景色です。南アルプス北部の名峰「甲斐駒ヶ岳」と「仙丈ヶ岳」、2つの日本百名山紅葉登山を楽しんできました。

■甲斐駒と仙丈の間、北沢峠にある「こもれび山荘」

バスに乗って北沢峠へ。シラビソの森のなか、優しい雰囲気が漂う「こもれび山荘」

 南アルプス北部の名峰、甲斐駒ヶ岳と仙丈ヶ岳。「北沢峠」を挟んで向かい合うように並ぶ2つの百名山を、それぞれ日帰りで登ってきました。

 友人の登山ガイドが下見に行くというので、それに付き添って2泊3日の行程です。初日は「南アルプス クイーンライン」のバスに揺られ、一気に標高2,032mの北沢峠まで。峠にある「こもれび山荘」をベースにして、2日目に甲斐駒ヶ岳、3日目に仙丈ヶ岳へと登る計画を立てていました。

朝夕はすっかり寒くなりました。日中でも肌寒いときがあり、薪ストーブの温もりがありがたい

 山荘に到着すると、管理人の狩野俊一さんが「今年の紅葉は例年以上にきれいな印象です」と告げます。この夏、あれほど暑かったのにも関わらず美しい紅葉となっているようで、翌日からの登山が一層楽しみになりました。

 夕食が終わると同席の登山者たちと歓談のひととき。我々と同じ2座を2日間で登る計画の人も多いです。ルートや天気の話から、今まで登って印象的だった山の話などでおおいに盛り上がっていました。

こもれび山荘

■白く輝く岸壁! “南アルプスの貴公子” 甲斐駒ヶ岳

沢沿いの道。振り返ると仙丈ヶ岳がモルゲンロートに染まっていました

 立体的な山容、そそり立つ岸壁。「摩利支天(まりしてん)」とあわせて花崗岩の白さが際立つ標高2,967mの甲斐駒ヶ岳。その端正な姿から“南アルプスの貴公子”とも呼ばれているそう。山頂部は高度感ある登山となります。

仙水峠から眺める甲斐駒ヶ岳。(山頂南東の岩峰)摩利支天が目立ちます

 出発前、朝4時に小屋前から空を見上げると、シラビソの合間から星が煌めいています。気温は4.7℃。好天を期待しながら、かろうじてヘッドランプがいらない明るさのなかを歩き出しました。長衛小屋の脇から沢沿いに上がり、神秘的な雰囲気の森のなか「仙水小屋」から「仙水峠」を目指します。

 仙水峠から見上げる甲斐駒ヶ岳は摩利支天が圧倒的なボリュームでそそり立っています。ここからは急な登りです。途中までは展望もありませんが、高度が上がると視界が開ける場所が出てきました。振り返って「栗沢山」「アサヨ峰」の方に目をやると、「鳳凰三山」の奥に富士山。右側には北岳と間ノ岳(あいのだけ)が並んでいます。日本の高山の1-2-3位を一望する贅沢な眺めです。

駒津峰から甲斐駒ヶ岳を望む。ダケカンバが緑から黄色へと色づいて華やかです
駒津峰から先は急な岩場がいくつも登場します

 六合目「駒津峰」から先は岩場が次々と登場します。「六方石(ろっぽういし)」を経て、直登ルートへの分岐がありますが、こちらは“破線ルート”となっています。岩稜に慣れた人のみ。岩の難易度も然ることながら、ルートファインディングの難易度も上がります。

※ 破線ルート:実線で表記される一般ルートと異なり、破線で表記されるルートはさまざまな理由から難易度が高い。

山頂直下のザレた斜面は露出感と高度感があります。背後には富士山や北岳と間ノ岳、高峰が連なります

 巻き道も徐々に高度感あるザレた斜面となり、登りでは体力を奪い、下りではスリップを誘います。こちらも視界不良時は目印を見失いがちですので、要注意です。

広い甲斐駒ヶ岳の山頂。山岳信仰の対象としての厳かな雰囲気と開放感の両方を感じます
氷点下になった証。水が溜まったところには氷が張っていました

 広い山頂は、日本三大急登としても有名な「黒戸尾根」からや「鋸岳」からのルートも集います。展望は素晴らしく、富士山や遠く北アルプスの山並みなど、枚挙できないほどの山々の眺望を楽しめました。祠や石仏、石碑など、古くからの信仰の対象となっていたことがうかがえます。登頂時、水が溜まっていた場所には氷が張っていました。

秋の光が差し込む森。昼過ぎですが、夕方が近いことを感じます

 下山ではジャンクションピークである駒津峰から「双児山」ルートで下りました。しっかり整備された歩きやすい道ですが、疲労が溜まっていると足をくじいたりしやすいので、最後まで気を抜かずに下りましょう。

【今回のルートと所要時間】北沢峠(こもれび山荘) 05:20 → 仙水峠 06:45 → 駒津峰(六合目)08:15 → 甲斐駒ヶ岳 09:30/10:10 → 摩利支天 10:40 → 駒津峰 12:00 → 双児山 12:30 → 北沢峠(こもれび山荘)13:40