◼️母、さすがです

到着早々、光小屋のブースで「いらっしゃいませ〜」と八百屋のようにアンズを売り始める母。
「オカン、あんまりこういうところで『いらしゃいませ』なんて言わないかもよ」と私。幼馴染のお母さんは、ポップをさっと書いてくれたり、品物を並べたり、ぱっぱ、ぱっぱと準備してくれる。急遽集まった3人で過ごす一日。こんな日は人生にもう2度とないのではないかと、じんわりと思った。
会場で出会ったみなさんは、以前光小屋に宿泊してくださった方、20年前に行ったよ〜、30年前にテントで泊まったな〜という方などさまざま。「今度行くから」と声をかけてくださった方もいた。小屋のグッズも、出来たてほかほかの本も、お客さんの顔を見て手渡しできたことがとても嬉しかった。
肝心の売り上げは…… なんとアンズが完売という驚きの結果に。母、さすがです。
■紀行作家のシェルパ斉藤さんと出版記念トークショー

紀行作家のシェルパ斉藤さんこと、斉藤政喜さんとの縁は、以前私が働いていた鳳凰小屋にシェルパさんが取材で来てくれたことから始まる。その後、自転車で利根川沿いを走り、東京ディズニーランドを目指したり、800kmも運転して八幡平の避難小屋に薪を運んだり、一緒にいろんな旅をした。
当時の私はアルバイトで生計を立てていたので、時間の都合をつけやすかった。お誘いがあれば、「はいはい! 行きます!」と、まるで犬が尻尾を振って散歩に行くような感じ。
今回は「元気出しなよ〜。せっかく街にいるんだし」と、トークショーのゲストに呼んでくれたのだ。じつはシェルパさん、『還暦ヒッチハイク(産業編集センター刊)』という本を出版したばかり。お互いの本のことや四方山話。いつものように、たくさんおしゃべりをしていたら、あっという間に夜が更けていた。皆さんがうんうんと聞いてくださり、その夜は胸がホクホクしてなかなか眠れなかった。
振り返ってみると、私はこの場所で金峰山小屋の吉木さんと出会って職を得たり、たくさんの出会いをいただいてきた。この日の夜も、久しぶりの再会と初めましての出会いが心地よかった。根暗な私でも一歩外に出れば、人からたくさんのパワーをもらうから不思議だ。足がもう少しよくなったら、また元気な顔を見せたいな。