■芝沢ゲートへは、市内からやっぱり2時間かかりました!

スタッフ高橋くんと地域おこし協力隊片山さん。これを背負って運ぶ

 翌日は、飯田市から1時間車を走らせて木沢小学校へ。昭和7年に建てられ、現在は廃校になっているノスタルジックな木造校舎の残る小学校だ。

 始まりの挨拶をして、皆さんと乗り合わせて芝沢ゲートを通り、その先の聖光小屋まで向かう。数年前に台風19号で派手にやられた区間は、綺麗に整備されている。飯田市の皆さんのおかげだ。直しては崩れて、直してのイタチごっこだろう。でも、こうして毎回整備してくれる。本当にありがたい。

 せめて私のできることは、この林道で事故が起きないよう注意喚起をすることだろう。うるさいと言われようが、命が一番なのだから。

聖光小屋の広場で下準備中

 出発する皆さんを見送り、私は聖光小屋で電話番。聖光小屋の仲山さんから「バッジはここにあるから」と伝言を仕り、春蝉の賑やかな声を聞きながら過ごす。「大谷くんの試合でも見てなよ」と仲山さんは言ってくれたけど、電気が通っていると言っても勿体ないし、なにより皆さんが一生懸命作業している間に野球観戦をするのは気が引ける。

 聖光小屋は電波が届かないので、電話は衛星電話だ。久々のデジタルデトックス。ふと、本棚に目をやると、ファイルが目に留まった。それは、遠山山の会の皆さんと聖光小屋の仲山さんが地元の中学生と光岳登山に行った記録。もしやとみてみると、昨晩ゲストハウスで出会ったあの女性が、子どもらしい無邪気な笑顔で写っていた。こういう驚きのタイミングで出会いがあるのだから、縁とは面白い。

■みんなで資材、必要工具も背負います!

無事に橋が完成!  一番ノリのお兄さん

 今回、地元遠山山の会の皆さんと整備するのは、西沢渡(ニシザワド)での仮橋をかける作業だ。芝沢ゲートから聖岳へ行ったことのある方ならご存知だろう。よく流されてしまう、あの橋である。私も聖岳への入下山時には、何度もこの橋に助けてもらった。

 橋がない時は、ロープを引っ張って動かすゴンドラのお世話になる。渡渉をするより濡れないし、安心だけれど、ゴンドラは重くて腕がパンッパンになるし、なかなか進まない。下山時なんて、「いっせーの、せーの!」と最後の力を振り絞らねばならない。だから、橋があって渡れる時は「ラッキ〜!」なのだ。

 何もできない私の気持ちも背負ってくれるかのように、長さ4mほどのぶっとい角材を肩にのせて斜面を歩いていくスタッフの高橋くん。頼もしい後ろ姿。普段は山の上にいる私たちも、麓のみなさんと一緒に作業ができて嬉しい。シーズン中、流されず踏ん張ってほしいな!      

翌日静岡へ移動する私たちを、万歳三唱で送り出してくれた遠山山の会の皆さん

 今日の作業は、皆さん腰まで水に浸かっての作業になったそう。14時頃に整備を終えて、聖光小屋の広場に戻ってきた。お疲れ様でした。みんなが怪我なく戻ってきてほっとする。私は結構心配性なので……

 松葉杖をつきながら、部活動のマネージャーになったような気分で、母が持たせてくれた杏を皆さんに配る。あとは、甘いものを食べながら世間話。私はなんて呑気なのだろう。

 木沢小学校に戻ると、南アルプスの開山祭、そのあとはお疲れ様会と続いた。遠山に住んでいるみなさんが、普段は山の上にいる私たちのことを麓から気にしてくださっていた。見守ってもらっている安心感。ありがたい。

 ジュージューと焼き肉を焼きながら、「光岳に行くとなぜだか安心するっちゅうか、ほっとするんだよな〜」と地元の方。その言葉に、「私も同じ気持ちです!」と嬉しくなった。麓に山を大切に思っている人たちが暮らしていて、私たちはその山で暮らし、働いている。悲しい事故がないようにしたい。自然に負荷をかけないようにもしたい。改めて気を引き締め直し、今シーズンも行ってきます!