長野県木曽町の中心、木曽川沿いに広がる木曽福島宿は、中山道37番目の宿場として江戸時代に栄えた町だ。奈良井宿や妻籠宿(つまごじゅく)と比べると、落ち着いた雰囲気である。今回は、その石畳の道を足で歩き、町の魅力をじっくり堪能してきたので、紹介したい。
■関所から始まる歴史の物語
木曽福島駅から徒歩25分ほどで、たどり着く福島関所は、江戸幕府が設けた関所のひとつで、かつての江戸と京を結ぶ中山道の重要な通行管理の拠点。江戸を出る女性や武器の持ち込みを厳しく取り締まる「出女・入鉄砲」の検問が行われたことでも知られる。
現在は資料館として整備されており、門構えの奥には、当時の役人が詰めていた詰所や、通行手形の実物、古文書、武具などが展示されている。現地を訪れると、単なる展示物による「歴史の説明」ではなく、当時を思い起こさせるような空気が漂っていたように感じた。
■千本格子が並ぶ町並みを歩く
関所を出て少し歩くと、町の表情が一気に変わる。石畳の両脇には千本格子の町家が並び、木曽漆器や地元の工芸品を扱う店、古い旅籠を改装した宿、そして人々の生活が息づく家々が混在している。
格子の間から光が漏れ、時折、風鈴の音や味噌の香りが漂ってくる。歩くたび、靴底と石畳がこすれる「コツ、コツ」という音が、耳に残る。賑やかな観光客の姿はほとんどなく、聞こえるのは自分の足音と、遠くから聞こえる木曽川の流れだけだ。