■ツツドリとモンクロシャチホコの関係

 モンクロシャチホコの幼虫は「鳥」にとっての重要なえさにもなっている。他の鳥にも食べられていると思われるが、特に渡り鳥である「ツツドリ」は好んで食べることが知られている。ツツドリは9〜10月頃、南方への移動中に各地の公園などに立ち寄るが、そこでモンクロシャチホコの幼虫を食べているのをよく目にする。

モンクロシャチホコを食べるツツドリ

 毛のあるイモムシ(=毛虫)と毛のないイモムシの場合、一般的には毛のある方が捕食されにくいと言われている。ところが、ツツドリを含む「カッコウ目カッコウ科」に属する鳥は、むしろ毛虫を好んで食べるという変わった食性を持つ。そのため、せっかく防御のためにある毛も役に立たない(むしろ好んで食べられる?)のだ。

 昆虫は日本で知られているだけでも3万種もいる、地球上でもっとも多様性の高い生き物だ。「えさ」の視点で見ると、その多様性はさまざま生物の好みに対応し、地球上の生態系を支えている。このように他の生き物に食べられるということも、虫が持つ大切な役割だ。

 モンクロシャチホコを見つけたら、この「食べる×食べられる」という関係性についても観察してみてほしい。