梅雨の時期に連想する植物といえば、色とりどりの花が可愛らしい「アジサイ」だろう。この花を見て、虫観察のスポットとして捉える人はあまりいないに違いない。

 しかしながら、じつはアジサイの上で出会いやすい虫がいる。「ヨツスジハナカミキリ」だ。アジサイのような意外な場所で、出会える理由について解説していこう。

■アジサイとヨツスジハナカミキリ

 アジサイの青、紫、ピンクなど大きな花びらに見える部分は、じつは花ではないことをご存知だろうか。この部分は「装飾花」と呼ばれ、「がく」と呼ばれる器官が発達してできたもの。本当の花(真花)は、がくの内側、もしくはがくをかき分けたところにあり、その1つ1つはがくよりも目立たない小さな姿をしているのだ。

アジサイの真花

 アジサイに集まるヨツスジハナカミキリは、「ハナカミキリ亜科」というグループに属するカミキリムシだ。ハナカミキリの仲間は、成虫が植物の花に集まり花粉や蜜を食べる習性がある。好む植物は種によって異なるが、ヨツスジハナカミキリはアジサイ類を好み(アジサイだけではないが)、その真花の花粉や蜜を食べにやってくるのだ。

アジサイにやってきたヨツスジハナカミキリ

 ハナカミキリの仲間には山地性のものも少なくないが、ヨツスジハナカミキリは平地でも普通に見られ、もっとも身近なハナカミキリとも言えるだろう。人里近くでも、ある程度広い林や森があれば、付近のアジサイでその姿を見られる可能性がある。山では園芸品種でないヤマアジサイやタマアジサイがよく自生しているが、それらの上でも見られる。

 もし彼らを見つけられたら、虎のような派手な模様のかっこいい姿を、ぜひじっくりと観察してみてほしい。