公園や森などを歩いていると、地面に小さな穴が空いているのが見られることがある。アリの巣とは違う、はっきりと丸い穴がポツポツと空いている。5、6月頃、その小さな穴を観察していると、面白い虫に出会えることがある。「ツチスガリ」と「ハラアカマルセイボウ」だ。それぞれ体長1cm前後と、非常にミクロなハチである。
なぜこの異なる2種のハチが同じ穴で見られるかというと、両者には”ある関係”が存在するからだ。早速、解説していこう。
■ツチスガリとハラアカマルセイボウの関係
ツチスガリは、ギングチバチ科に属するハチである。ほとんど真っ黒な姿だが、顔や腹に部分的にある黄色い紋がチャーミングだ。
本種は小さく可愛らしい姿ながら、「狩りバチ」の仲間だ。狩りバチとは、昆虫やクモなどの獲物に針を使って麻酔をかけてから巣などに運び、幼虫の餌にするという生態を持つ。ちなみにツチスガリが獲物にするのはハナバチという、また別のハチの仲間である。

そして今回紹介するもう一種のハチが、ハラアカマルセイボウ。緑と赤の金属光沢を持つ、とても美しい姿のハチだ。こちらはセイボウ科に属し、いわゆる「寄生蜂」と呼ばれるハチである。

この2種が見られる舞台である地面に空いた小さな穴は、このツチスガリの「巣穴」である。ということでもう察しはついたと思うが、ハラアカマルセイボウは、ツチスガリの巣穴に”寄生”をするためにやってくるのだ。
■ハラアカマルセイボウの寄生行動
生物による寄生の仕方にはいろいろなものがあるが、ハラアカマルセイボウは「労働寄生」というタイプの寄生をする。ツチスガリが巣に運んだ獲物に卵を産みつけ、孵化した幼虫がその獲物を食べて成長する。ツチスガリそのものを食べるのではなく、ツチスガリの労働力を利用して獲物を横取りしてしまう、というわけだ。
ツチスガリの巣を観察していると、ハラアカマルセイボウがその周辺で巣のことを伺う様子が見られる。宿主のツチスガリに見つかれば妨害されるのであろう。そうして隙を見つけると巣の中に入り、しばらくすると出てくる、といった行動を取る。
ハラアカマルセイボウのような小さなハチを、何の手がかりもなく見つけるのは難しい。しかし、巣穴とこの行動のことを知っていれば、彼らと出会えるチャンスが生まれるのだ。
