残暑が厳しい今の時期に桜の木を見上げると、葉が何者かによって食べ尽くされている、または一定範囲の葉がない、という光景を見ることがある。
葉を食べた犯人は、「モンクロシャチホコ」という毛虫(幼虫)。葉がなくなっている状態の桜をよく見てみると、この毛虫がたくさんついているのだ。
今回は、9月によく見られるモンクロシャチホコについて、早速解説をしていこう。

◼️桜の葉を食べた虫はモンクロシャチホコの幼虫
モンクロシャチホコは「チョウ目シャチホコガ科」というグループに属するガの仲間だ。”シャチホコ”ガとはユニークな名前だが、これはシャチホコガ科の幼虫が、危険を感じると頭部と腹部を持ち上げるポーズを取ることが由来である。

幼虫にはたくさんの毛があり、いかにもな毛虫姿をしているが、毒はない。ちなみにモンクロシャチホコの幼虫には赤いものと黒いものが見られるが、赤いものは若い幼虫で、黒いものは成長して大きくなった幼虫だ。
また、若い幼虫は集団生活をする習性がある。みんなで並んで桜の葉を食べ、葉がなくなると隣に移動してまた食べる、という行動を繰り返す。そのため、モンクロシャチホコの移動に伴って葉が消失してしまうのだ。

タイトルの100匹というのは例えではあるが、実際に100匹以上いるであろう場面に出会うことも少なくない。
■モンクロシャチホコの成虫の姿
モンクロシャチホコは成虫になるとイメージが変わる。その姿がこちらだ。

まるで高級カーペットのようなはねを持つ、エレガントな姿である。このカーペットの模様のような”黒い紋”が「モンクロ(紋黒)」の名前の由来だ。
ちなみに、虫は種ごとに年に何回発生するかがある程度決まっている(※)。モンクロシャチホコは年に1回の発生で、成虫は8月に多く発生する。
※例えば、モンシロチョウは暖かい地域では年に5〜6回、寒い地域では年に2〜4回ほど発生すると言われている。
そのため、8月は街灯などにモンクロシャチホコがとまっているのを目にする機会が少なくない。モンクロシャチホコは桜を食べるため、街中でもよく見られる。身近に観察することのできる”夏の虫”の一種なのだ。