夏に森などを歩いていると、植物に「白い綿」がついているのを見ることがある。ほとんどの人は特に気にせずに通り過ぎているだろう。しかし、遭遇したらぜひ近くで観察してみてほしい。なぜなら、その白い綿は「生き物」である可能性があるからだ。
というわけで、その生き物の正体について解説していこう。
■植物につく白い綿の正体
植物につく白い綿の正体は「虫」である。しかし、それは非常に小さな姿のものが多く、肉眼ではなかなか確認できないことも多い。

そこで、マクロレンズを通して見てみると、その姿がはっきりと見えてくる。写真の樹木につく白い綿の正体は「アオバハゴロモの幼虫」であった。

アオバハゴロモは「カメムシ目アオバハゴロモ科」というグループに属する昆虫の一種だ。カメムシ目共通の特徴は、”口器が針(ストロー)のように細くなっている”こと。アオバハゴロモもこの特徴を持っており、ストローのような口器を植物に刺して汁を吸う。そのため、植物の上でよく見られるのだ。
また、アオバハゴロモの幼虫は“ロウ物質”を分泌して全身にまとう習性がある(ロウ物質をまとうことで、捕食者から身を守る効果があると言われている)。幼虫はとても小さい(数mm程度)ので、少し離れた場所から見ると、そのロウ物質が白い綿に見えるのである。アオバハゴロモは7〜8月頃に成虫になる。そのため幼虫は6〜7月頃に目立って見られるようになる。

ちなみにアオバハゴロモは成虫の姿にも注目だ。アオバハゴロモの成虫は、ライムグリーンの大きなはねを持つ。1cm程度の小さな虫ではあるが、”羽衣”の名に違わない、美しい姿をしている。
アオバハゴロモは個体数も多く、身近に見られる昆虫なので、見つけたらぜひその姿を観察してみてほしい。