■海水を飲むためにやって来るアオバト



アオバトは、群れで飛来すると、目的地の安全を慎重に見極めたうえで、磯に着陸します。そして、そのくぼみにたまった海水に嘴をつけたままゴクゴクと飲みます。普通、鳥が水を飲むときは、嘴で水をすくってから上を向いてのどに流し込みます。しかし、ハトの仲間は鳥の中では珍しく、下を向いたまま水を飲むことができるのです。
海水を飲まなければ生きていくことができないアオバトですが、海水がたまっている磯場には、当然波も打ち寄せます。波が来るとアオバトは慌てて飛び立っていきます。そのため、時には着陸してから飛び立つまでわずか数秒ということもあります。ゆっくり海水を飲む余裕もありません。
■大きな荒波に大ピンチ!

この日は、台風一過であり普段より波は高めでした。
すると、突然、大波が押し寄せてきました。「あっ!」思わず声を上げてしまいます。弾け飛ぶ白波。慌てふためくアオバトたち。中には白波に完全に飲まれてしまったものもいます。しかし、一瞬 間を開けてその砕け散った白い泡の中から力強く羽ばたいて飛び出してきたアオバトがいました。危機一髪難を逃れたのです。それは、まるで「インディージョーンズ」などのアクション映画の脱出シーンを見るような光景でした。しかし、時には、大波にさらわれて命を落とす個体もいるとのことですし、強い台風が過ぎた後には、アオバトの亡骸が美しい海岸線に点在しているという話も聞いたことがあります。
アオバトが生き抜くための「海水を飲む」という行動は、彼らにとっては欠かせないものでありますが、一方で命がけの行動でもあるのです。

頭の上をたくさんのアオバトが飛んでいきます。青と緑のコントラストをギャラリーの目と心に鮮明に残しながら飛び去って行くアオバトを見ながら、彼らの無事を願わずにはいられませんでした。