■80代、気力がすごい!

朝、食堂からの景色を共有する。お客さんとお茶を飲みながら太陽を待つ

 5泊6日の計画で聖岳、光岳と回ってきた男性は、「やっと来られた。あと3か月で80歳になるんだ」とちょっと誇らしげで嬉しそうだった。

 山の先輩に連れられてきた70代の女性は、「キツかった〜」と言いながらも夕立に合う前に小屋に到着し、角部屋の壁にもたれ、のんびり談笑している。こんな風に小屋で過ごしてもらいたかったから、その姿がなおさら嬉しかった。

最後の一座は娘さんと一緒に。バンザイおめでとう!

 しかし翌日、先輩の靴が取り違えられて、ぐちょぐちょに濡れた同じメーカーの靴が残されていた。「そんなこともあるよね」と先輩は飄々としていて、声を荒げたり、こんな靴履きたくないと泣きごとを言ったりなんてしない。次は富士山、その後は北アルプスに行くけど、間に合うかな〜と先の山の心配をしている。この先輩、80代と聞いてさらに驚かされた。

◼️健康でさえいれば、歳を重ねることも悪くない

82歳のお客さん。百名山達成のお祝いは、居合わせた孫のような高校生と一緒に

 歳の大きいお客さんたちも多い光岳。あの道を歩いて登り、下りるのだから本当に皆さん元気だ。登山口までも遠いのに、本当によく歩くな〜と感心する。私が同じ歳になった時、あのパワーや気力を持ち合わせているだろうか。皆さんに会って、健康でさえいれば歳を重ねることも悪くない。いやむしろ楽しみとさえ思える。

 「じじいグループだから朝は早く出るけど、遅くなってしまうかも」

 「母が百名山で一緒に行きます。サポートの用意はありますが、到着が遅くなってしまうかも」

到着できてよかった! とおちゃめな女性は、年の離れたお友達と一緒に

 そんな連絡を事前にくださる方もいる。到着が遅いと心配になるけれど、連絡をいただいているとちょっと安心して待てる。それに連絡してくれるような方々は計画をしっかり立てて出発するから、たいてい明るいうちにちゃんと着いてくれる。

 小屋にいる私たちの役目は、いろいろな思いを持ってここにやってくる人たちの安全登山のサポートをすること。歩くのは当人だけれど、今年も気持ちを新たに、できる限りのお迎えしたい。

 とはいえ、長い道のりの光岳。挑戦するならお早めに、ね。