アポイ岳(810m)は低い標高ながら寒冷な環境と特殊な土壌により、他では見られない高山植物を見ることができる花の名山である。

 花見登山で賑わうのは5月、6月だが、7月以降に咲く夏の花にも見所がある。また、低山であっても日高特有の雰囲気を持った切り立った山容は純粋な山登りとしても魅力的だ。

 2024年に新しく指定された「日高山脈襟裳十勝国立公園」は国内最大の国立公園。日高の山は登山が難しい上級者向けの山が多いのだが、アポイ岳はアプローチも容易な初心者向けの山だ。

 登山口のアポイ山麓自然公園には温泉キャンプ場もあり、夏休みのファミリーキャンプ、ファミリー登山にもおすすめの場所である。7月に行った夏山登山の様子をレポートしたい。

■施設の整ったアポイ岳の登山口

キャンプ場には芝のテントサイトのほか、バンガローもある

 アポイ岳は様似町(さまにちょう)の日高山脈支稜線西南端に位置する。登山口はアポイ岳ジオパークビジターセンターの裏手となるが、ビジターセンターではアポイ岳周辺の様々な情報を得ることができる。

 また、併設しているアポイファミリーパークキャンプ場も非常に手入れが行き届いた良いキャンプ場だ。テントのフリーサイトは広大で、トイレ、炊事場所もしっかりしている。小さなバンガローもあり、清潔で利用料金もリーズナブルだ。キャンプ場の横に流れるポンサヌシベツ川は子ども達が安心して水遊びができるようにも整備されている。

 さらにキャンプは苦手な人にはアポイ山荘という温泉ホテルもあり、これら全てが徒歩圏内で隣接している。キャンプやアウトドアを楽しみながら、登山も温泉もと、いろいろ楽しめる場所だ。

■整備が行き届いた登山道! アポイ岳登山

登山道上に設置されている休憩所

 アポイ岳の登山道は非常に整備が行き届いている。前半の5合目までは樹林帯の道で森の中を進む。途中、随所にベンチのある休憩所も設置されている。5合目には避難小屋と携帯トイレブースがある。ここではやくも森林限界を超えるので、視界が一気に開ける。高山植物の花々はここから。目指すアポイ岳の山頂も見えてくる。

 5合目までの緩やかな登山道から、後半は所々岩場のある岩稜帯尾根歩きとなるが、階段などもあるので歩くのに難しいところはない。最後の急な尾根を登り切れば、白樺の幼木に覆われた山頂に着く。