初夏といえば、緑がきれいな深緑の季節。

 登山やキャンプを始める時期だと思うのですが……たまにはちょっと方向転換。山の緑を見るのも気持ちがよいものですが、庭園の緑にも目を向けてみませんか?

 今回は京都の庭園。京都付近で登山やキャンプをして、別日に庭園散策を組み込んでみるのもよいかもしれません。

 京都というと春の桜や秋の紅葉が有名ですが、夏だからこそ見られるのが深緑です。夏にかけて日照時間が長くなり、光合成を行うために葉を茂らせることで、青々とした風景を作り出します。

 しかし、上ばかり見上げていてはいけません。下を見ると苔が繁茂し、地面も緑色。苔にとっても、夏は光合成を盛んに行う時期です。

 深緑と苔。夏だからこそ、二つを一気に楽しめるスポットが京都にはたくさんあります。

上も下も緑で埋め尽くされる苔と深緑の空間に癒されよう(JR東海提供

■小倉山山腹に佇む深緑と苔の世界「常寂光寺」

 江戸後期に作り変えたという常寂光寺(じょうじゃっこうじ)の山門を潜ると、そこはもう青々とした深緑と苔の世界。参道の両側は苔に覆われ、それは深緑の葉を生やす木の幹の色まで隠しています。木々も空を覆い尽くすほど葉を茂らせており、一面緑といっても差し支えないほど、視界が緑です。

 その緑の中に佇むのが、境内で最も古い建築である仁王門。先には階段と絨毯のように敷き詰められた苔が見えます。

仁王門の先には山門を潜ったよりもさらに苔が繁茂している(JR東海提供)

 階段を上ると、両側には途切れることなく広がる苔。マンジュウゴケやスギゴケ、ハイゴケをはじめとするさまざまな苔が生えています。近寄って観察してみると、青っぽい緑や黄色がかった緑など、苔によっても少しずつ色味が異なっているのがよく分かります。

苔に近寄ってみると意外と形に違いがあって面白い

 この苔を作り上げるには、細々としたお手入れが必要不可欠。草抜きや落ち葉の掃除などもして、養分を奪う雑草や光合成の機会を奪う落ち葉から守らなければなりません。

 その手間を知ると、全体を景色として楽しむのもよいですが、苔を単体で観察してみたくなりますね。

 さて、今度は少し視線を上げてみましょう。今回、着目してみたいのは青モミジ。嵯峨野に位置する小倉山は平安時代後期からモミジの名所として知られ、周辺には貴族が別荘を建てていたようです。

 そんな小倉山の山腹にある常寂光寺には、主にイロハモミジとオオモミジの2種類が野生で生えています。この2種類の違いはいろいろありますが、面白いのが種のできる位置です。イロハモミジは葉の上に種ができ、オオモミジは葉の下に種ができます。

 オオモミジの種は確認できませんでしたが、イロハモミジには種がついています。真っ赤な種が青いモミジの上に覗いていて、まるで花のようです。

イロハモミジの緑に映える真っ赤な種が上向きに見えている

 イロハモミジは枝が細くてしなやかなため、少し枝垂れて見えるのも種が目立つポイント。一方、オオモミジはイロハモミジよりも枝にハリがあって、葉も大きくがっしりとしています。この違いによって、風景全体に緑が広がって見えるのでしょう。

【DATA】
常寂光寺
住所/京都府京都市右京区嵯峨小倉山小倉町3
時間/9〜17時
休/無休
料金/500円
https://jojakko-ji.or.jp

●【MAP】常寂光寺(京都府京都市右京区)