京都・嵐山と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、「渡月橋(とげつきょう)」や竹林の小径をたくさんの観光客が行き交う光景だろう。では、そのすぐ近くに地元の人々が日常的に訪れる登山ルートがあるのはご存じだろうか。
今回は嵐山の「もう一つの楽しみ方」として、自然と歴史、観光までを一度に楽しめる「松尾山」のハイキングコースを紹介する。
■朝、人気のいない静かな渡月橋を歩く

登山前にぜひ立ち寄ってほしいのが「渡月橋」。筆者が訪れたのは、春の観光シーズン真っ只中の3月下旬の週末。ピーク時には観光客で大渋滞となるこの橋も、午前8時なら驚くほど静かだ。桂川を眺めながら、のんびり景色を楽しむことができ、橋の上からも人を気にせず写真撮影ができる貴重な時間だ。
渡月橋の南側にある嵐山公園中之島地区から北西方向に、亀の甲羅の形をした山が見える。「小倉山(おぐらやま)」だ。小倉百人一首の名前の由来ともなった山で、百人一首の選定者「藤原定家(ふじわらのていか)」の別荘があったことから名付けられたそうだ。この山も松尾山同様に、地元の人々に人気の低山である。
■松尾山への登山道は、竹林の小径から始まる

今回目指す松尾山(標高約276m)は、小倉山と反対の南側に位置する。麓には酒造りの神様としても有名な松尾大社があり、境内には全国各地の酒造会社が奉納した酒樽が山のように積まれている。また松尾山の頂上付近には、かつて信仰の対象とされた巨岩があるそうだ。

嵐山公園近くの阪急嵐山線 嵐山駅から徒歩5分ほどで、登山口に到着。京都一周トレイルの標識「西山26」番が目印だ。

登山口からしばらくは、美しい竹林が続く登山道を登っていく。観光名所の「嵐山竹林の小径」に比べて人も少なく、ひっそりとした雰囲気の中、登山をスタートできる。
徐々に高度を上げ、竹林を抜けるころには体も心も登山モードに。途中、視界が開けた場所から嵐山モンキーパークのある「いわた山」が見える。いわた山は多くの観光客で賑わっており、その様子が遠目にもよくわかる。
■京都五山の送り火「鳥居形」展望スポット

登山口から20分ほどで四つ又の広場に到着。ここには北側に開けた展望スポットがあり、遠くの山肌に、五山送り火の一つ「鳥居形」が見える。
五山送り火とは京都の伝統行事で、毎年お盆の8月16日の夜、京都にある五つの山に火が灯される。有名なものとして大文字送り火がある。「鳥居形」は他の送り火に比べて見られる場所が限られているため、ぜひ探してみよう。
四つ又まできたら山頂はすぐそこだ。広い山頂には、手作りのベンチやテーブルが設置されていて軽食や休憩にピッタリ。またここからの京都市内の眺めも格別。阪急嵐山駅から30分足らずで、この展望が味わえるのも松尾山ならではの魅力である。