JTBグループのJTBパブリッシングが発行する「JTB時刻表」は、2025年4月号で創刊100周年を迎えた。

 1925年に「汽車時間表」として創刊。以来、ライバル誌「JR時刻表」とともに、鉄道旅行者のバイブルとして長年親しまれてきたが、近年はPCやスマホの普及によって「ジョルダン」などの時刻検索サイトが広く利用され、伝統的な「紙」の時刻表は影が薄くなったようにもみえる。

 しかし「時刻表上級者」からすれば「紙」の時刻表の存在意義はまだまだ大きい。スマホを使うよりも早く、有意義な結果にたどり着くことも珍しくない。

 今回はそんな術も紹介しながら、「東京から青森まで1日で各駅停車(快速を含む)のみで移動し、避暑&温泉キャンプで人気上位地の酸ヶ湯(すかゆ)キャンプ場へ向かう旅」を、時刻表の誌上で実践してみたい。

■検索サイトは部分認識の世界、紙の時刻表は全体認識の世界

乗換駅のひとつ・酒田駅前

 紙の時刻表の強みを一言でいえば、スマホとは異なり、見開きの大きなページから、ひと目で大量の情報を得られる点にある。

 紙の時刻表は、基本的に縦軸に駅、横軸に時間という、数字の列のグラフである。ひとつのページに収まる線区であれば、目的の列車の前後(駅軸)左右(時間軸)の位置関係なども含めて瞬時に認識できるのだ。

 異なる線区を乗り継ぐ場合は、見開きページの両端に線区が記載されており、パラパラとめくれば、目当ての線区にたどり着く。巻頭の地図ページからも目当ての線区を探せるが、上級者ともなると、分厚い時刻表を手で触っただけでおおよそ何ページ目なのかを認識でき、どのページにどの線区が記載されているのかも巻頭の地図ページに頼ることなく探り当てられるため、検索スピードは恐ろしく速い。

 とりわけ上級者のなかでも、青春18切符のヘビーユーザーに至っては、東京駅や上野駅など主要駅の始発列車と、それに接続する列車を数本先まで「暗記」している強者も存在する。

 彼らは、紙の時刻表で、日本全国を鈍行(特急券不要の快速を含む)だけで縦断するルートや時刻を知り尽くしている、というワケだ。

■日本海ルートは、思いのほか、スムーズに乗り継げる

JR秋田駅前。1時間の乗り換え時間を夕食タイムに

 では早速、時刻表の誌上で、「東京から青森まで1日で各駅停車(快速を含む)だけでたどり着く」という命題に挑戦してみよう。

 かつて、東北新幹線が盛岡止まりだった時代、このルートは、東北本線1本でたどり着けたが、現在、盛岡以北は第三セクターとなっており、原則、青春18切符は使えない。しかし、新潟・秋田経由のルートであれば、実は1日でたどり着くことができる。

 以下、紙の時刻表で調べ挙げた結果を以下に記す。なお、この試みは2025年6月号の時刻表を使用。あくまでもその時点での結果であることを留意されたい。

上野5時13分発(高崎線)高崎6時55分着
乗り換え時間16分
高崎7時11分発(上越線)水上8時18分着
乗り換え時間10分
水上8時28分発(上越線)長岡10時18分着
乗り換え時間11分
長岡10時29分発(信越本線快速)新潟11時29分着
乗り換え時間15分
新潟11時44分発(白新線・羽越本線)村上12時57分着
乗り換え時間44分
村上13時41分発(羽越本線)酒田16時13分着
乗り換え時間17分
酒田16時30分発(羽越本線)秋田18時23分着
乗り換え時間60分
秋田19時23分発(奥羽本線快速)青森22時18分着

上野-高崎-水上間は1ページに収まっていて見やすい!

 まず、上野駅 5時13分発の始発列車に間に合う範囲に住んでいることが大前提になるが(山手線沿線に住んでいればまずOK)、筆者の場合、池袋まで片道約40分歩き、この列車に乗った経験がある。

 また、想像以上に接続がよく、ローカル線にありがちな、乗り換え駅で数時間待ち、という区間は無かった。

 ちなみに秋田駅では乗り換え時間が60分あるが、エキナカもしくは駅前で「夕食」の時間に充てたいところだ。所要時間は乗り換えも含め、約17時間。最後の青森駅を降り、宿で床についても、しばらく体が揺れている感覚が抜けないことだろう。