「登山」と聞くと、電車やバスを乗り継ぎ、山奥へ向かう長いアプローチを経て、ようやく登山口にたどり着くイメージを持つ人も多いだろう。しかし、栃木県足利市にある両崖山(りょうがいさん)は、その常識を覆す街ナカ登山の名所である。
最寄りのJR足利駅や東武鉄道足利市駅から商店街を抜け、風情ある街並みを30分ほど歩くと、やがて「織姫神社」が姿を現わす。カラフルな鳥居と長い石段が印象的なこの神社の裏手が、両崖山の登山口だ。
「登山」と「街歩き」がつながっている場所は全国的にも珍しい。おしゃれなカフェや老舗和菓子店に立ち寄り登山が楽しめるのだ。
■両崖山はアウトドアの入口に最適な半日旅
両崖山のルートは織姫神社側から登り、本城エリアを通り往復ピストンが可能。全行程は3時間ほどで登って下りて、さらには街歩きまで含めても、十分楽しめるボリューム感となっている。
道中にはベンチや案内板もあり、登山道は明瞭。初心者でも安心して歩ける。装備もハイキング用のスニーカーと動きやすい服装があれば問題ない。下山後には、地元のレトロな喫茶店でランチを楽しんだり、足利市の銭湯で汗を流したりと、ちょっとした旅気分も味わえる。登山と街歩きを一体で楽しめるからこそ、限られた時間でも非日常が満喫できるのだ。

■山城両崖城の歴史的跡地を巡る
両崖山には石碑や案内板が並び、ただの山とは異なる雰囲気を醸し出している。実はかつての山城両崖城の跡地。戦国時代に足利氏が築いた城で、幾度となく戦乱の舞台となった歴史を持つ。
登山道の途中にも城の痕跡が残っており、目を凝らせば中世の山城の構造が随所に感じられる。ハイキングに「歴史探訪」という視点が加わることで、ただの山歩きが物語性を帯び、より豊かな体験へと昇華する。
歴史好きやファミリー層にとっても興味深い要素であり、知的好奇心を満たしてくれる山である。また、登山口の織姫神社も縁結びの神様として知られる歴史的スポット。さらに足を延ばせば、日本最古の学校といわれる足利学校なども楽しめる。まさに、街全体が歴史のテーマパークとなっている。
