■40日間の入院生活

事故のあと、救急搬送された由佳さんは、病院での診察中にはじめて激しい痛みを感じたという。背骨を折る重症で、診断は「椎体(ついたい)骨折」。全治は半年とされ、40日間の入院を余儀なくされた。
背骨が折れているため、最初の10日間は完全にベッドから起き上がれない生活。身動きすらとれない状態が続いた。
「いちばんつらかったのは、喉が渇いても、すぐ横にある冷蔵庫から飲み物をとることすらできなかったことです。トイレもすべてベッドの上でした」と当時の苦労を振り返る。
「もう、山に登れなくなるかもしれないという恐怖はなかったですか」と尋ねると、意外にもそんな恐怖はなかったという。仲間たちが登山している様子をSNSで見かけたときは、はじめは勇気がいったものの、不思議と平気で見られたそうだ。
「『40日間の入院か…… それなら今年の雪山までには間に合うかな』と勝手に思っていたんです。でも先生に『退院してもしばらくは登れないよ。再開できるのは春以降かなあ』と言われました」