過去5年間増加していた山岳遭難の発生件数、遭難者数は2024年夏期(7〜8月)、ようやく減少に転じた。2023年の夏期の山岳遭難が1968年の統計以降、発生件数、遭難者数ともに過去最多であったため、減少に転じたことは喜ばしいことだ。しかし、減少したといえども依然多くの山岳遭難が発生している。この記事では、2024年の警察庁のデータをもとに山岳遭難の現状を解説する。また、遭難しないために必要な対策は何かについても、併せて考えたい。

■夏期の遭難件数は、過去4年連続増加から2024年は減少に。令和6年夏期における山岳遭難の概況  警察庁統計より

令和6年夏期における山岳遭難の概況(出典:山岳遭難・水難|警察庁Webサイト)を加工して作成

 山岳遭難とは登山やハイキング、沢登り、山菜採り、渓流釣りなどを目的として山に入って遭難した人のことをいい、そのうち登山を目的とした人の割合は全体の8割ほどである。

 2024年夏期における山岳遭難は以下となる。

・発生件数:660件(前年比78件減少)
・遭難者数:736人(前年比73人減少)
 うち死者・行方不明者:52人(前年比9人減少)

 いずれも過去最多だった前年に比べて減少した。

 都道府県別では長野県が116件、富山県が64件、静岡県が62件とアルプスや富士山など夏場に人気のある高山で多く発生していると推測される。

 遭難者を年齢別に見ると、736人中70代が166人、60代が164人、50代が148人と50〜70代が全体の6割5分を占めている。多くは天候に関する不適切な判断や、不十分な装備で体力的に無理な計画を立てるなど、知識・経験・体力の不足等が原因で発生していると報告されている。

令和6年夏期における山岳遭難の概況(出典: 山岳遭難・水難|警察庁Webサイト)を加工して作成

 2024年夏期(7〜8月)の山岳遭難のまとめ

・山岳遭難者数736人
・発生場所は長野県、富山県、静岡県が多い
・年齢別では50〜70代が全体の6割5分を占める
・令和6年でようやく減少に転じる

▼警察庁 2024年夏期における山岳遭難の概況はこちらから

■体力・技術・経験・装備不足による遭難が目立つ

令和6年夏期における山岳遭難の概況(出典: 山岳遭難・水難|警察庁Webサイト)を加工して作成

 次に遭難の原因について見てみよう。遭難の理由として一番多いのは転倒、次に道迷い、滑落、病気、疲労と続く。そして注目すべきは、疲労と滑落、悪天候による遭難者の数である。道迷いによる遭難者数は過去5年間の中では最も少ない。一方、疲労と滑落、悪天候による遭難者数は過去5年で最も多くなっている。

 先の報告にもあった通り体力や技術、経験、装備不足の登山者による疲労や滑落、悪天候に対応できないといった遭難が増加していることが見て取れる。

 筆者の個人的な見解だが、スマホのGPSアプリが普及したことで、道迷いによる遭難は減少しているが、その便利さゆえに誰でも簡単に山に入れるようになったこともあるのではないだろうか。

 では、次に遭難を防ぐために登山者ができることは何かについて考えたい。