数年前に比べると、出没数が増加の傾向にあるクマ。環境省のデータによると、令和5年度のクマによる人身被害件数は過去最悪を更新。令和6年度の速報値では昨年ほどの報告数はないことが読み取れるものの、登山者一人ひとりがクマ対策の知識を身につける必要があることには変わりない。
悲しいクマ被害に遭わないために、知床財団が提唱するクマと出会わないための対策や、書籍『人を襲うクマ―遭遇事例とその生態』を参考に、登山者が心得るべきクマと遭遇しないための行動を考えてみたい。
■頼りすぎてはいけない熊鈴
クマ対策といえば、一番に思いつくのが熊鈴であろう。鈴を鳴らすことによって人間の存在を知らせることが目的であるが、熊鈴があれば安心というわけでは決してない。
知床財団によると、特に「霧や日暮れの時間帯」「沢の音や風の強い日」「雨の日」などはクマも人間を認識しづらくなるため「普段以上に音を鳴らすこと」を注意喚起している。
実際に筆者が参加したことのある知床五湖のガイドツアーでも、ガイドは意識的に音を出して、人間がいることをアピールしていた。特に曲がり角のような見通しの悪い場所では必ず一度立ち止まり、低い声で大声を出したり、手を2、3回叩いてみたり、ホイッスルをピッピッと短く吹いたりしていた。
トレッキングポールなどを握っていると手を叩きにくいので、音は自分に都合のいい方法で出せばよいとのことだったが、重要だと感じたのは、音を出した後に周りでガサガサと音がしないか気配に耳を澄まして、確認してから道を進むようにしていたことだ。
このようなガイドの行動や対処には学ぶことが多く、同時に熊鈴だけでは到底足りないと強く感じさせられた。
■まずはクマに遭わないための下調べを
まず大切なのは「クマに遭わない工夫をすることに尽きる」と『人を襲うクマ』には書かれており、ガイドツアーでの実践でも体験することができた。そのために事前にできることとして挙げているのが「自分の向かうルート周辺での最近のクマ出没情報を調べること」だ。
また知床財団によると、クマは季節によって食べるものを変え、それに伴い活動範囲も変化するという。季節ごとのクマの利用地域を知ることは、遭遇を避ける重要な情報となる。ただクマの習性や行動パターンに関する不確実性を考慮すれば、できる限りの自衛をするのがよいだろう。
同財団のホームページには、季節ごとにヒグマが好んで食すものや危険な場所についてまとめてあるので、ぜひ山に入る前の下調べの参考にしてほしい。
知床財団
ホームページ:https://www.shiretoko.or.jp/higumanokoto/bear/bear1/