現場は斜面で、木が林立していてまったく平らな場所がない──。そんな場所でサウナをやるには、サウナステージを「空中に浮かせる」しかなかった。企画段階では「そんなことできるわけない」と思われたが、夢は描き続け、口に出し続けることで形になっていく。森に溶け込むような、自然と共生するサウナ村への第一歩が、いよいよ動き出す。
■仲間たちと夢を形にしていく
「こうだったらいいな」の思いで、僕が妄想で書き殴ったサウナ村のイメージ。書いてみたのはいいけれど、そもそも、どうやって森にテラスを浮かせるのか? 素人の僕らだけでは到底無理な構想だった。

そこで登場したのが、日本ログビルド界の第一人者・関根潤一さんだった。彼は若かりし頃、単身カナダへ渡り、厳しい自然の中でログビルドを学び、やがて本場のカナダ人たちに技術を教えるまでになった人。過去には倉本聰氏のドラマのモデルにもなったこともある、知る人ぞ知るレジェンドである。

関根さんが同じ岐阜に住んでいたこと、共通の知り合いがいたこと、そして何より、僕たちの「自然と共生するサウナ村構想」に共感してくれたことで、プロジェクトに協力してくれることになったのである。
とはいえ、全部関根さんに丸投げでは意味がない。この村は、みんなで作る村だ。そこで関根さんを「先生」として迎え、教えを乞いながら、自分たちの手で形にしていくことを決めたのである。
■森を傷つけないツリーテラスづくり
ツリーテラス作りには、絶対に譲れないルールを設けた。
・木は一本も倒さない
・木に直接釘を打たない
・コンクリートは極力使わない
・木材はすべて岐阜県産であること
ただでさえ大変なのに、この条件を貫くのは「めちゃくちゃ大変」である。しかも未開地で傾斜地。クレーンも重機も入れない。材料運びだけで心が折れるのは目に見えている。それでも、すべて人力で、汗だくで、泥だらけになりながらやるしかなかった。
