■開幕! 大人のリアルマインクラフト
作業イベントは全10回。「循環型サウナ村づくりイベント」と銘打ち、開拓村民を募った。本気でログビルドを学びたい人、自然の中で体を動かしたい人、DIYに興味がある人、村づくりを応援したい人、村民同士の交流がしたい人など、参加者の目的は様々だ。


材料を運んだり、木材をカットしたり、カンナがけするところからのスタート。みんな慣れないことばかりで思うように作業が進まないが、関根さんはいつも笑顔で臨機応変に対応してくれた。木の特性を教えてくれたり、水平の出し方、木にダメージを与えない土台の作り方、工具の使い方など、本当に学びになることばかり。これは今後の人生においても大きな財産となった。



資金にものを言わせて業者頼みで一気に作るものより、こうしてみんなで愛情を込めて手作りしたサウナ村こそ、僕にとっては理想とするものだった。どんなにお金をかけてオシャレで立派なサウナ施設があっても、そこに「愛」がなければ何の魅力も感じない。どれだけの汗と思いと笑顔が染み込んでいるか。それがとても重要なことなのだ。

■作業の合間に生まれるもの
昼休みには、美しい円原川のほとりで、地域のおばあちゃんたちが作ってくれた素朴なお弁当を食べた。それは、汗だくの体に沁みるごちそうだった。この取り組みを通して、参加者に地域のやさしさに触れてもらうのもひとつの狙いだった。

作業後には、別の場所で設営したテントサウナにて汗を流す。時にはBBQもして、ビールを片手に理想のサウナや村づくりの夢を語り合った。それぞれいろいろな想いで集まった仲間たちが、こうして同じ時間を重ねることで、いつしか目的を共有する「村民」になっていく。たった一人、ナタ一本から始まったこのプロジェクトが、少しずつ、確かな形を持ち始めた瞬間だった。

■村は手で作り、心で育てる
やがて、開拓村民の汗と知恵を結集して、第一ツリーテラスが完成した。それはまるで森に浮かぶ巨大な海賊船のようで、同じ船に乗り合わせた仲間たちの姿は、まるでこれから“ひとつなぎの大秘宝”でも探しにいくかのような雰囲気だった。

斜面の森にぽっかり浮かぶウッドデッキ。木々の間を抜ける風が心地よく、円原川のせせらぎと鳥の声も美しい。汗と泥と笑い、そして愛。このテラスには、特別なものが宿っている。どんなに立派な施設にも、金ピカな建物にも、決して真似できない、「みんなの物語」がここにはある。
こうして、サウナ村の最初の拠点となるツリーテラスが完成した。でも、まだこれは「始まり」にすぎない。これから川への階段を作り、塗装もし、動線を整え、まずは最低限サウナができる状態にまで持っていかないといけない。トイレもないし、更衣室もない。やることはまだまだ山積みだ。
しかも、じつはこの数か月後、記録的な大雪が村を襲い、このテラスは大きなダメージを追うことになる……。開拓の試練は次から次へとやってくるのだ。そのあたりのお話はまた今度。
次回は、環境土木による動線作りの様子をお送りしていく。