重機を入れられない場所での土木作業は、すべてが人力だ。一個一個重たい石を運び入れ、ツルハシで土地をならし、杭を打って土留めを作りながらツリーテラスへの動線を作っていく。その光景はまさに開拓者のそれであり、情熱と愛情がないと成し得ない大変な作業だ。
このような開拓の前段階として重要なのが“動線づくり”。今回のテーマである「事業計画づくり」だ。ここで手を抜かずに時間をかけてやったことで、“理想のサウナ施設への動線”がしっかりと見えてくることとなった。
■サウナ市場を徹底調査し、現在地を把握する
すべてを失った絶望の日から、1か月が経過した2024年3月末。シン・サウナ村を実現するための土地が見つかり、円原川でのテストサウナで心身が復活した僕は、早速村づくりのための事業計画のラフ案制作に取り掛かった。
まず、最初に行ったのは、徹底的な市場調査だ。数字上、“サウナブーム”は一定の落ち着きを見せてきていたが、サウナはしっかりとブームから“文化”へと定着し、多様なニーズに対応するために細分化してきていた。その中から見えてくるターゲット層や、業界が抱える課題、日本のサウナ文化のあるべき未来像を炙り出し、シン・サウナ村の立ち位置や存在価値を客観的にまとめる作業を行なっていった。
ただ、市場の動向や経営的なことに引っ張られすぎると、大衆思考や売上重視となって理想のサウナ村とはかけ離れてしまうこともある。ということで、次に行ったのは“超個人的”に感じている街のサウナ施設やアウトドアサウナ施設の不満点の炙り出し作業。そして、それらの課題を解決する理想的なサウナ施設とはなんぞや? を、市場動向も踏まえつつ整理していったのだ。
■サウナ施設の課題を炙り出し、理想像を導き出す!
超個人的に感じている、街サウナ施設のここが苦手だよポイントは、以下の5つ。
1:ブームで人が多すぎて全然ゆっくりできねえ!
2:熱源がガスや電気だから熱の肌あたりが強い〜
3:湿度が低いドライサウナが主流で息苦しいったらない!
4:水風呂の水質が良くない・カルキくさい・狭い!
5:そもそもロケーションが自然の中じゃないから癒されん!
以上の理由で、個人的にはどんなに有名なサウナ施設でもあまり行く気にならない。土日祝日の人が多い時なんかは尚更だ。そこで、これらの課題を解決しようとすると、必然的に自然の中でゆっくり楽しむアウトドアサウナ施設に行こう! となってくるわけだが、結局、そこにも多くの不満があった。
まず、アウトドアサウナの代名詞的な「テントサウナ」だが、導入しやすいがゆえに、キャンプ場やグランピング施設など、「流行っているからとりあえず入れとくか」というノリでやっているところがじつに多い。基本的にそういうところはサウナ愛が薄いので、大抵サウナ自体も水風呂も質が低く、リスク管理意識も低かったりする。
もしくは資金があるところは、有名建築士が手がけました的な超かっこいいサウナもあるが、ハードを導入したことに満足して「そこじゃなきゃ成り立たない」というソフト面でのオンリーワンさを出せているところが少ない。正直、行く前から「まあこういう感じだろうな」と容易に想像できてしまったり、一度行けばもういいかな、になってしまうことも多々あった。
そして、多くのアウトドアサウナは2時間の相席制のところが多い。結局これも運営的なことを考えると「人を多く回さないと成り立たない」からなんだが、利用する側からすると2時間では全然時間が足りず、心からゆっくり過ごせない。
また、テントサウナを貸切でやっているところもあるが、結局施設自体を完全貸切してるわけじゃないから、隣接する他のテントサウナのグループが騒がしかったり、環境自体が人が多かったり車が多く走る場所の近くだと、静かに自然と向き合えないことも多い。
ということで、はるばる自然の中まで出向いているのに、質・人の数・環境・時間的に満足できないのでは、街のサウナと変わらないことになってしまう。これらが現代のサウナ事情に対する個人的な不満であり、課題だと感じていた。