「理想のサウナ村を作る!」── そう豪語して始まったこのプロジェクト。構想は壮大、想いは熱い、でも金はない。もし資金調達という概念がなければ、今ごろ僕は山の中で「幻のサウナ構想」を語るだけの怪しい男として、シカたちに囲まれながら暮らしていたことだろう。

 今回はそんな「金がないオジサンが、どうやってサウナ村の資金を集めたか」をリアルに振り返っていこうと思う。

■1:地域おこし協力隊の活動費

 僕はこの4年半、岐阜県山県市の委託型地域おこし協力隊として活動してきた(コロナの影響があり1年半延長。通常は3年間)。任務内容は、自らが提案した「地域丸ごと宿構想で限界集落を盛り上げ持続可能にする」というもので、この5年でコワーキングスペースと古民家宿の整備、エコツーリズムの開発(サウナはここに含まれる)、農家レストランやカフェなどとの地域連携を進めてきた。

この4年半、地域丸ごと宿構想「ヒトイキ村」の整備をひたすら続けてきた

 地域おこし協力隊は「活動費」という名の経費が使え、物は買えないが、アドバイザー招聘や活動に資する消耗品などに使うことができる(行政の認可は必要)。この活動費を利用して、僕は「自らを強化」することにした。

  主に使用したのは以下の活動だ

公益社団法人「日本サウナ・スパ協会」のHPより受験申込できる

◎サウナ資格取得費:

サウナ・スパプロフェッショナルとサウナ・スパ健康士の資格を取得。あらゆる角度でサウナを堂々と語れるように。

印象的だった施設はTHE SAUNA、サーマルクライムスタジオ富士、鉄輪蒸し湯

◎サウナ施設視察費:

己の目と肌で良いところを体感し研究! サウナ村に生かせるように。

◎中小企業診断士への相談:

経営ど素人なので、プロに相談!

自生植物観察会や、ハーブを使ったバウムや石鹸作りのイベントも行った

◎薬草研究教授のアドバイス費:

最高のハーブ蒸しサウナを作るため、地域の薬草を徹底的に調査!

◎チェーンソー資格取得費:

チェンソーマンになって、地域課題の放置間伐材を薪や資材へ!

◎サウナテストに伴う消耗品費:

実験なくして進化なし!  

 

 こうして、僕は活動費を駆使して、初期のドラクエ冒険者のようにひたすら己のレベルアップに邁進した。そして、この冒険(事業)を個人の趣味で終わらせないため、地域おこし協力隊卒業時に申請可能な「起業支援補助金」も活用し、法人化手続き費用とテントサウナ購入費用(こちらは物の購入に利用可能)を捻出し、冒険の準備を整えたのである。

■2:日本政策金融公庫からの融資 

 総事業費を見積もると軽く1000万円超え。でも貯金は…… いい歳こいてほぼゼロ。以前川サウナをやっていた場所では、資金がないからと甘い話に乗ってしまい、結果的に場所も情報もノウハウもすべて奪われて酷い目にあった。今度こそは、自分の力でやり切るという強い覚悟を決めていた。

 とはいえ、信用ゼロの僕が銀行から融資を受けるのはかなり厳しい。そこで商工会に相談し、日本政策金融公庫のマル経融資(小規模事業者経営改善資金)を使うことになった。マル経融資は、超ざっくり言えば無担保・無保証人で借りられる制度で、商工会の推薦があれば、僕のような小規模事業者でも申し込み可能だ。

 商工会担当者の指導のもと、なんとか審査をクリア(サラッと書いたけど大変でした……)。目標の1000万円は無理だったが、最低限の整備費用は確保できたのである。