春の気配が色濃くなり始めた3月中旬、茨城県霞ケ浦(かすみがうら)沿岸にある小水路では、「マブナの乗っ込み」が始まっていた。産卵を控えたマブナは食欲旺盛で、大型が釣れる絶好のチャンス。春の風物詩ともいうべき乗っ込みマブナを味わうべく、期待を胸に現地へと向かった。果たして、念願の尺(30cm)マブナは姿を見せてくれるのか。春めく水辺で繰り広げられた釣行の模様をレポートする。
■春は乗っ込み大型マブナを狙う絶好のチャンス

霞ケ浦における「乗っ込みマブナ(ギンブナ、キンブナなどの俗称)」とは、普段は広大な湖の中で暮らしているマブナが、産卵のために湖岸沿いの農業用小水路(通称「ホソ」)へ遡上してくる現象を指す。
本来の産卵場であった湖岸に生えるヨシ(別名アシ・イネ科の抽水性植物)帯が開発の影響で激減してしまったため、かろうじてホソに生えているヨシなどの植物に卵を産み付けるためにマブナたちはやって来るのだ。
実際に、ヨシなどの植物の根元に卵を産み付ける「ハタキ」と呼ばれるマブナの産卵行動が始まると、エサをほとんど口にしなくなると言われている。しかし、乗っ込みの段階にあるマブナは産卵に向けて栄養を蓄える必要があるため、非常に活発にエサを追う。このため、乗っ込みの時期は年間を通じて特に釣果が期待できるタイミングであり、尺(30cm)クラスの大型が狙える絶好のチャンスと言える。
■ホソの見極めが重要・テンポの速い釣りを心掛けると〇

マブナの乗っ込みの舞台となるホソだが、霞ヶ浦周辺のホソすべてでこれが見られるわけではない。釣果を得るには、「マブナが多く集まるホソ」を見極めることが重要なのだ。
その条件の一つとして、水質の良さが挙げられる。水がどんよりと淀み、長期間にわたって流れがないホソにはマブナが寄りつかない。一方、水田(イネ田やハス田)から水が供給されるなど、頻繁に水が入れ替わるホソは水が良く狙い目となる。
また、釣り人が集まっているホソは、それだけマブナが多くいる証拠でもある。湖岸沿いを車で移動しながら、釣り人が集まるホソを観察し、水の状態を見極めることが大切だ。経験を重ねていくとマブナが集まりやすいホソとそうでないホソの違いが自然と分かるようになるだろう。
乗っ込み期のマブナは活発にエサを追う。仕掛けを投入して15~20秒待っても反応がなければ、そのポイントには食い気のあるマブナがいない可能性が高い。すぐに仕掛けの位置をずらし、反応を探るのが効率的だ。マブナ釣りでお馴染みの「シモリウキ仕掛け」を用いれば、テンポよく広範囲を探れるのでおすすめである。

もし、一定範囲を探ってもアタリが得られない場合、そのホソには食い気のあるマブナが入っていないと判断し、思い切って別のホソへ移動するのが賢明だ。素早い状況判断でホソの良し悪しを見極め、活性の高いマブナを狙っていこう。
使用したタックルと道具は、以下のとおりである。
【筆者の使用タックル】
ロッド:ヘラブナ竿 2.7m
ライン:ナイロンライン 1.0号
シモリウキ: 0号のシモリ玉を5個使用
オモリ:重さの調整が可能な板オモリ(ラインを傷つけないために板オモリ軸を使用)
丸カン:ハリス止めとして使用
ハリ:袖針5号(0.8号のハリス付きで、カエシはつぶした)
エサ:生きたアカムシ(ユスリカの幼虫)

【あると便利な道具】
タモ網:長い柄のついた魚を掬うための網
針外し:魚がハリを飲みこんでしまった際に使用
エサ入れ:エサの乾燥を防ぐ
トレー:魚の写真撮影をする際に水を張って使用
観察水槽:釣った魚を横から観察できる
手洗い用の水:ペットボトルに入れて用意
タオル:濡れた手を拭くために使用