情報があふれる現代、私たちは常に“正解”を求める社会に生きています。しかし、正解が見えない世界で自分の生き方を見つける力こそ、これからの時代に必要な能力ではないでしょうか。

 そんな中、長野県小谷村を拠点に活動するアウトワード・バウンド日本校が提供する「Japan Adventure Leadership Training(JALT)」は、大自然の中で自分を見つけ、リーダーシップを育むユニークなプログラムとして注目を集めています。

■冒険が人を育てる?

自分たちの手作り筏で川を下る

 アウトワード・バウンドは、1941年にイギリスで誕生し、世界33か国に拠点をもつ世界的な冒険教育機関です。イギリス王室の教育プログラムで活用されたり、冒険家・植村直巳が学んだことでも知られています。

 その理念は、冒険や自然環境での挑戦を通じて人間力を高めること。日本では1989年にスタート、1993年にこの長期プログラム・JALTがスタートし、これまでに300人以上の卒業生を輩出してきました。卒業生の多くは自然学校や野外教育機関を立ち上げたり、様々な人間教育の各分野で活躍したりしています。

 このプログラムが特にユニークなのは、「冒険を教える」のではなく、「冒険を通じて人生のあり方を見つける」ことを重視している点です。また、プログラムは冒険教育の指導者(ファシリテーターやインストラクター)を育成する場としても位置づけられており、次世代の教育に欠かせない人材を輩出しています。

■大自然が教室、リアルな経験が教師

北アルプス遠征トレーニング

 JALTは、信州の美しい山々を舞台に48日間のプログラムとして実施されています。登山やカヤック・筏、ロッククライミング沢登り、キャンプなど多岐にわたる活動が展開され、参加者はリーダーとしての経験からスキルを磨いていきます。

 プログラムの核となるのは、成功が保証されていない「リアルな体験」です。挑戦を通じて自己の限界に向き合い、新しい価値観を見つけることが目的とされています。過去に参加した一人は、「何度も困難に直面しました。自分と葛藤し、仲間と対立し、本当の気持ちを分かち合い乗り越えるたびに、自分の成長を実感しました」と振り返ります。