■脂が酸化する時間はたったの8分
さて、オメガ3系脂肪酸は空気に触れると酸化して劣化すると書いた。ということは、魚をカットすれば、空気に触れる面積が増え、劣化がより促進されることになる。
この点において、日本の缶詰工場は素晴らしい取り組みをしている。カットしてから缶に詰め、真空状態で密封するまでの時間が驚くほど短いのだ。サバ缶なら、最短のケースでたったの8分である!
それに対して、スーパーなどに並んでいる生の魚は、水揚げされてから数時間、あるいはそれ以上の時間が経っているのが普通だ。もちろん衛生的に処理されて冷蔵状態を保っているが、オメガ3系脂肪酸は劣化している。
では、実際に生の魚と缶詰では、どれだけオメガ3系脂肪酸の含有量が違うのか? 文部科学省の「食品成分データベース」で、生サバとサバ水煮缶を比較すると、サバ100gあたりのDHA量は、生サバが970mgなのに対してサバ缶は1300mg。EPA量は生サバ690mgに対してサバ缶は930mgだ。どちらもサバ缶のほうが約1.3倍多いことになる。
缶詰メーカーが原料の鮮度にこだわるのは、こうした裏付けがあるからなのだ。
■生原料を使った缶詰を見分ける方法
最後に、ちょいと役立つ缶詰小ネタを披露しよう。
冷凍原料の魚を使った缶詰でも十分おいしいが、生原料の方がさらにおいしい。では、生原料を使った缶詰を見分けるにはどうするか? 賞味期限を見るのだ。
日本の缶詰のほとんどは賞味期間が3年ある。ということは、例えば賞味期限が「2026.11.10」と印刷されていれば、3年をマイナスして、2023年の11月10日に製造されたことがわかる。この11月という月がヒントになる。
もしそれがサバ缶なら、脂がもっとも乗る旬の時期がだいたい11月〜1月である(年によって多少変動あり)。この時期の缶詰工場は、毎朝のように市場でサバを買い付けているので、ほぼ生原料で製造しているはずだ。
同様に、イワシは6〜8月、もしくは1月頃が旬になる、なので製造月がその時期であれば高確率で生原料を、それ以外の時期であれば冷凍原料を使っているだろう。