■着々と進む小屋閉めの準備

雪囲いで半分閉まった部屋の窓から望む山々
わずかひと区画をのぞき、板で囲まれた浴室
ゴミ箱も最後はビニール袋に

 今回お世話になったのは、標高2,410mにある日本一高所の天然温泉が自慢の「みくりが池温泉」です。11月25日が営業終了日。小屋閉めに向けて、準備が着々と進められていました。

 部屋も窓はすでに半分ほど板で囲まれていましたし、展望が素晴らしい浴室も一か所をのぞいて覆われていました。滞在中も、小屋閉めに向けてゴミ箱が片付けられたり、使用できるトイレが縮小していったりしました。

 しかし、これらのことで不便や不満を感じることは全くありません。逆に、本格的な冬を迎える準備を共有できる幸せを感じる時間になりました。

 また、スタッフの方々のいつも以上にきびきびした動きにも感心させられました。小屋閉めの準備は1か月前ほどから始まり、2週間前から本格化したそうですが、各々の分担業務を粛々と行う姿に頭が下がる思いでした。

■おまちかねの最後の晩餐

新鮮な刺身や白エビの唐揚げなど豪華なバイキングにワクワク感
深海魚「げんげ」の唐揚げ、豚肉のソテーなどをたっぷりいただきました
もちろんアルコール類もたくさんふるまわれました

 利用者にとって小屋閉めの一番の楽しみは、一年間で最後の夕食だといっても過言ではありません。

 この日も食事前にオーナーからのご挨拶後、各テーブルに並べられたピッチャーがふるまわれ、全員で乾杯! ビールがなくなっても、日本酒やアルコール缶がまだまだたっぷりと用意されていました。料理は、各人に用意された小鉢以外はバイキング。新鮮な刺身などの日本海の幸を心ゆくまでいただくことができました。

 最近は、相部屋といってもコロナの影響もあってカーテンで仕切られていて、同部屋の初顔合わせの宿泊者と歓談する機会はほとんどなくなってしまいました。しかし、見知らぬ人たちでビールを注ぎ合うことで山談義も大いに弾み、素敵なひと時を過ごせました。

 スタッフの方々も無事に一年間の営業を終えることができ、うれしそうな表情でいっぱいでした。様々な苦労があったかと思いますが、多くの登山者・観光客が心と体を休める空間を提供してくださったことに感謝をしながら箸を進めたのでした。

外は満天の星。木星や“すばる”が輝いていました

 夕食後、外に出てみると、数えきれないほどの星が雄山上空に輝いていました。一番明るく輝くのは木星。その上に“すばる”もよく見えます。初冬らしい凛とした空気を吸い込むと体の芯から冷え込みます。すぐに温泉に直行したのでした。至福のひととき!!

冬支度を終え、これから深い雪におおわれる山小屋

 翌朝は普段より早い午前8時がチェックアウト。その後、小屋閉めの最終作業を行い、昼頃にはスタッフ全員が山を下りるとのことでした。

 これから立山の山小屋は、深い深い雪の中で静かな時間を過ごします。そして、来春、今度は残雪のスキーや登山を楽しみにくる人々を迎え入れてくれるはずです。

 山小屋と関係者の皆さん、一年間ありがとうございました。また、来年もよろしくお願いいたします。