初雪の知らせが次々と届き、毎日ソワソワしているスキーヤー、スノーボーダーも多いのではないでしょうか。高山の山小屋では、これから迎える厳冬期を前に、小屋閉めの準備に追われています。

 一方、今のところ降雪が少なく「初滑りはどこにしようか?」と悩んでいる人も少なくないはず。私もその一人です。例年なら立山でシーズンインするのですが、今年はやはり雪が少なく、スキーは難しそうと判断しましたが、やはり初冬の立山には行ってみたい。それに、営業を終了する小屋閉めで登山シーズンの締めくくりをしたい。そんな思いで玄関口の扇沢に向けて出発しました。

■立山黒部アルペンルート、日本唯一のトロリーバスがついに廃止……

日本唯一のトロリーバスのラストランは間もなくです

 「立山黒部アルペンルート」を利用して長野県側から立山に行くには、扇沢から電気バス・ケーブルカー・ロープウェイと乗り継ぎ、最後はトロリーバスに乗車して室堂へと到着します。しかし、そのトロリーバスが11月30日をもち、廃止されると聞き驚きました。社員の方に伺ったところ、修理用パーツがもうなくなっていて、今後の継続運行が難しくなったため、やむなく廃止に至ったとのことでした。筆者が愛好する“絶滅危惧種”のテレマークスキーも同様の悩みを抱えているため、とても残念な気持ちになりました。

 開業以来28年間にわたり、無事故で運行できたとのこと。関係者の皆さん、大変お疲れさまでした。来シーズンからは、電気バスが新たに運行するようです。

やはり今年は雪が少ない初冬となっているようです

 室堂に到着して周囲を見渡すと、やはり少雪であることがすぐにわかりました。いつもなら、足慣らしにまず滑る室堂山もとても滑れそうにありません。それでも、下界ではまだまだ見ることのできない今年初めての雪に心が躍るのでした。

いきなり軽アイゼンのベルトが切れてしまい応急処置。シーズンインはマテリアルチェックが大切です

 さて、室堂平の散策を始めようかと、軽アイゼンのラチェット式ベルトを引っ張るといきなり切れてしまいました。スキーバンドでなんとか代用しましたが、シーズンイン“あるある”です。やはり出発前に道具の点検を欠かしてはいけないことを改めて感じました。30年間愛用しているソレルのカリブーもそろそろ心配になってきました。

■雪が少なくたって初滑りは立山で!

朝早くから元気なスキーヤーたちが山に向かっていきます

 翌朝。快晴ですっきりとした青空が広がっています。放射冷却で冷え切った空気が心地よく感じられます。そんな中、脚自慢のスキーヤーたちが吹きだまりのパウダーを求めて出発していきました。

 室堂ターミナルの掲示板には、「剣沢:積雪40cm・新雪20cm」と表示されていました。滑れるほどの積雪がある場所は限られていますが、それでもスキー上級者なら、うまく雪を拾って滑ってくることができるのでしょう。

 昼頃には、雷鳥沢には、多くのシュプールが描かれていました。帰ってきたスキーヤーたちは「いやあ、たくさん岩がヒットして板をやっちゃったよ。」と言いながらも顔は初滑りの満足感でニヤけていました。もちろん、初中級者にはまだまだ危険がいっぱい。転倒すれば岩との接触が避けられない場所が無数にあります。これからの長いシーズンを楽しむためにも初滑りの無理は禁物です。

みくりが池に映る「逆さ雄山」。見事な快晴です
“立山のアイドル”ライチョウも冬モードに変身です

 気温はぐんぐん上昇し、アウターや手袋も脱ぐほどになりました。雪をかぶった山々を眺めているだけで幸せな時間を過ごすことができます。

 ハイマツの陰には、すっかり真っ白になったライチョウが体を休めていました。これからの厳しい冬を無事に乗り切ってほしいと願いました。