山梨県の大菩薩峠(だいぼさつとうげ)南部に「あること」が日本一の山がある。標高1,990mの牛奥ノ雁ヶ腹摺山(うしおくのがんがはらすりやま)だ。この山の何が日本一かというとそれは、名前。長い名前が日本一なのだ。
今回は実際に筆者が辿った大菩薩嶺の大菩薩湖北岸駐車場から出発し、大菩薩峠、大菩薩嶺、天狗棚山、小金沢山、牛奥ノ雁ヶ腹摺山を目指した縦走ルートの中から、牛奥ノ雁ヶ腹摺山を紹介する。
牛奥ノ雁ヶ腹摺山へのルートは2通り。
1つ目は車ですずらん昆虫館前バス停付近まで行き、バスならすずらん昆虫館前バス停で下車して牛奥ノ雁ヶ腹摺山をピストンで登るルート。
2つ目は大菩薩嶺から縦走するルートだ。車なら大菩薩湖北岸駐車場に停め、バスなら上日川峠バス停、または小屋平バス停で下車し、大菩薩峠を目指す。駐車場から、まずは大菩薩嶺と牛奥ノ雁ヶ腹摺山方面の分岐点となる大菩薩峠を目指す。大菩薩峠到着後は、尾根伝いに大菩薩嶺と大菩薩峠をピストン。その後、牛奥ノ雁ヶ腹摺山方面へ進み天狗棚山、小金沢山を経由、牛奥ノ雁ヶ腹摺山を目指し、大菩薩湖北岸駐車場に戻ることも可能なルートだ。
■印象的な冒険味溢れる立枯林
すずらん昆虫館前バス停からのピストンの場合、登りは約2時間で山頂まで到達し、下りは約1時間40分というルートだ。しばらくは緩やかな登りの広葉樹に囲まれた林道が続く。富士山を背に時折のぞく景色を眺めながら歩くと尾根に出る。山頂に近づくと急に辺り一帯が立ち枯れの景色へと変わり、ちょっと驚く。
この立ち枯れ林の現象は「縞枯れ現象」という山の自浄作用によるもので、枯れた木の根元には幼樹が育っている。一見荒廃地のようで、「ここで何があったのか」と冒険心にかられる。間近で見ると、確かに1本1本は枯れて葉の1つもないのだが、しっかりと直立していて力強さを感じる反面、寂しさも感じる光景だ。ここを越えるとまもなく山頂だ。
■道中から望める景色が開放的
牛奥ノ雁ヶ腹摺山は周囲の山々と標高が同じくらいで、遮蔽物が少ないことから、景色の展望がよく解放的な気分で登ることができる。山頂では、前述した縞枯れ現象や富士山や南アルプスなど、変化に富んだ景色が楽しめるので、登っていて楽しい。
周囲の山々の稜線に自身が辿ってきたルートを見るとここまで登ってきた苦労が報われる。凹凸のある山や谷の続く風景をゆっくり堪能しよう。