■朝イチ、大場所プールでの僥倖! あとは「流れのなかの魚を狙う」のみ

開始早々さっそく釣れたのは、この日一番の大物となった50cmの良型でした!

 すでに何組かの釣り人が思い思いの場所で釣りを開始していましたが、皆まずは上流を目指すのか、駐車スペースから一番近い大場所のプールが空いていました。取材日は放流からずいぶんと日数が経っており、簡単には釣れないだろうと思いつつも、プールで目視できたうちで一番大きい魚を観察し続けました。定位するわけでもなく広いプール内を行ったり来たりしている様子を15分くらい眺め続けて、下流からそっとアプローチします。ふた流し目、自分でもびっくりすることに件の魚がフライを咥えてくれました。

 強い引きにハラハラしながらネットに導いたのは50cmの良型ニジマス! 流線型の太い魚体が印象的でした。あまりに出来すぎた結果は朝イチならではの僥倖でしょう。案の定、後が続きません。他の魚たちを狙うもその後は目ぼしい反応を得られず、上流に釣り上がることに。けれど大場所に浮いている魚たちは皆スレているようで、流れてくるフライにわずかに目を配る程度の反応でした。

勢いよく流れ落ちる流心の脇、反転流の泡の下から飛び出したのはレッドバンドが印象的なニジマス

 そこで目先を変えて、流れの芯やその周辺に潜んでいる魚を狙ってみます。これが功を奏し、あっけないほど簡単に良型が掛かりました。そこからは30分に一匹ずつ、なんとかネットに入れることができました。同じニジマスといえど釣れる魚たちにも個性があり、浮かんできた姿を見るたびにドキドキします。

 一度車に戻って昼食をとった後、今度は思い切って最下流部へ移動してみました。ロッドを振りながらも彩り艶やかな紅葉の渓の光景にカメラを向けてしまいます。釣りをしながら水面ギリギリから写真を撮れるのは、ある種釣り人の特権でしょうか。少しだけのつもりが、またしてもすっかり夢中になってあっという間に時間が過ぎていきます。流れに絡ませてフライを流すとアタリはありますが、なかなかフッキングしません。2時間で3匹、アベレージサイズのニジマスを釣り上げて退渓としました。

紅葉美しい渓谷によく似合う色気あるニジマス

 こういった釣り場での楽しみは、他の釣り人たちとの情報交換的な井戸端会議もありますね。土地柄、今回話した方たちは関西人ばかりでした。比較的寡黙な人が多い印象の釣り人といえど、そこは関西バイブス? ノリの良さで話が弾みます。遠路長野からやって来たと言うと、なお一層話が膨らみました。放流後なら2桁は当たり前、80匹くらい釣った人もいると皆口を揃えて言うので、話半分でもないのでしょう。

 取材日のように神経質な魚たちを攻略するのこそが醍醐味とうそぶきながら、入れ食い状態だったらどんなだっただろうなどと、つい想像してしまったりもします。いずれにせよ、また機会があれば訪れたい釣り場が増えました。

※11月17日にニジマスの放流が行われたようです。明らかに釣果が上がっていますので、より一層楽しめそうですね。