愛知県新城市(しんしろし)の人里を離れた山間部は「奥三河(おくみかわ)」とも呼ばれ、今も手付かずの自然が多く残っている。かつて織田・徳川軍と武田軍が激突した有名な「長篠の戦い」もこの地で繰り広げられ、歴史的にもよく知られた場所だ。
今回はそんな奥三河にある大迫力の奇妙な巨岩が鎮座する渓谷「乳岩峡(ちいわきょう)」を紹介する。
■乳岩峡登山口へのアクセス
乳岩峡登山口へは、車でも鉄道でもアクセスできる。車の場合は県道沿いの「小滝橋駐車場」に停めて登山口まで徒歩で約25分、鉄道の場合はJR飯田線・三河川合駅から徒歩で約30分だ。
それぞれの拠点から歩き出すと、宇連川(うれがわ)に架かる橋の前に案内板があるので、それに従って橋を渡り、まずは乳岩峡の登山口を目指そう。
【乳岩峡ハイキングコース】所要時間
乳岩峡登山口(0:00) → 入仙橋 (0:15) → 分岐(乳岩一巡昇り口)(0:25) → 通天門(0:35) → 乳岩洞窟 (0:40) → 分岐(乳岩一巡昇り口)(0:40) → 入仙橋 (0:55)→乳岩峡登山口(1:10)
歩行距離:約1.7km
累積標高差:登り 214m、下り 214m
合計所要時間:1時間10分
■圧倒的な渓谷美からトレッキングスタート
川沿いに舗装された道を歩くと、乳岩峡の登山口が見えてくる。乳岩峡は宇連川の支流、約2kmの峡谷だ。なお、この付近一体は天竜奥三河国定公園に指定されている。
峡谷には標高675mの岩山「乳岩山」がそびえており、登山道はこの岩山を一周するようなコースになっている。1時間ほどで回れるコースだが、バリエーションに富んだ登山道や景観を楽しむために時間に余裕をもっての入山をおすすめする。
入り口付近にトイレもあるので、準備を整えたらトレッキングスタートだ。
登山口を入るとまず目に入るのが、一枚岩のような岩床が続く光景。すぐ横を流れる川から、見物席のように一段高くなっていることから「桟敷岩」と呼ばれる。桟敷岩は、昔川底だったところが隆起し、その後侵食された跡で、岩場は川の横にあり濡れているところもあるので、滑らないように注意して進もう。
桟敷岩を歩いていると、すぐ横を流れる「乳岩川」の透明度に驚く。エメラルドグリーンに澄んだ穏やかな流れに目を凝らしていると、小さな魚の姿が。両岸はともに木々が多く美しい林で、鳥のさえずりがひっきりなしに聞こえてきて気持ちがいい。
■巨石がゴロゴロと現れる岩山の深部へと進む
桟敷岩を過ぎると登山道は林の中に入っていく。道はよく整備されているが、石や木の根っこの階段や岩肌に沿って進む箇所もあり、なかなか登り甲斐がある。
林を進んで深部へ入っていくと、登山道のいたる所に巨岩が現れる。その大きさや変形的な形に、つい何度も足を止めて、まじまじと観察したくなってしまう。