長野県と山梨県に広がる八ヶ岳はいくつもの峰が並び、このうち硫黄岳は山頂部に大迫力の爆裂火山跡があることで知られている。今回は、八ヶ岳の稜線に最も近い登山口である桜平から入山し、オーレン小屋に1泊してから硫黄岳をに登る、余裕をもった快適な山行プランを計画。出会った人との「ご縁」を大切にするピースフルなオーレン小屋は、ホスピタリティに溢れた“また来たくなる”山小屋だった。
■桜平からオーレン小屋へ
入山口となる桜平はバスが通っていないため、車かタクシーでのアクセスとなる。駐車場は、上・中・下の3エリアに分かれ、そこまで行くルートは未舗装路の林道。上の駐車場の少し下に入山口のゲートがある。
しばらく川沿いにアスファルトの道が続き、30分ほどで夏沢鉱泉の山小屋が見えてくる。ここで小休憩をとり、さらに進むと本格的な登山道へと雰囲気が変わってくる。苔むしたシラビソの森が広がり、「北八ヶ岳っぽい雰囲気になってきたな」とわくわくしてくる。
■五色の旗がたなびく「オーレン小屋」
夏沢鉱泉から50分ほどでオーレン小屋に到着。初日の行程は1時間半にも満たないとても楽な内容だ。このまま硫黄岳を往復して日帰り登山もできるのだが、今回はオーレン小屋に泊まって、翌朝に山頂を目指すというプランを組んだ。居心地が良いと評判のこの小屋にぜひとも泊まってみたかったのだ。
11:00~14:00は昼食メニューを提供しており、ボルシチや牛カルビなど山小屋とは思えない豪華料理を味わえる。屋外にはパラソル付きのテラス席があり、まるで高原リゾートのような快適さだ。
小屋の前の小さな川を渡った先にはキャンプ場(テント場)があり、すのこの上に幕営できるところも一部ある。
■名物「桜鍋」&お風呂も堪能
この小屋で楽しみにしていたのが夕飯で味わえる名物「桜鍋」。八ヶ岳山麓では昔から馬肉が食べられており、「すき焼きといえば赤身の馬肉」というのが一般的だったのだとか。山小屋を訪れた常連客にその馬肉のすきやきを出したところ、大変好評だったため「桜鍋」として定番メニューに加わった。それが今ではすっかり“オーレン小屋名物”として定着している。
山小屋で作っている秘伝の割り下は、山小屋の初代主人の味を再現したもの。酒と醤油、砂糖のみとシンプルだが、どれもよいものを使っているという。
部屋は羽毛と羊毛のふかふかな布団が用意されており、窓から森を見渡せる快適な環境。また、部屋は先着予約順で個室、大部屋と埋まっていき、個室料金はかからないという。水力発電を利用しているため、各部屋にコンセントがあるというのもうれしい限りだ。
また、水が豊富な環境とあって、お風呂に入れるのがオーレン小屋の魅力。檜の湯船で体を伸ばし、のんびりくつろぐげるのは至福の極みだ。