大弛峠(おおだるみとうげ)は、山梨県山梨市と長野県南佐久郡川上村(みなみさくぐんかわかみむら)の境に位置する、奥秩父山塊主脈上の峠だ。その標高は2,360mで、マイカーで通行できる最も高い車道として知られている。

 大弛峠に設置された駐車場からは、日本百名山・金峰山(きんぷさん)をはじめとした奥秩父山塊の山々に登ることができる。

 今回は、大弛峠を起点に、約2時間で3座をめぐるピストンコースを紹介する。登山道は歩きやすい木道と林道で形成されており、行動時間も短いのでビギナーにもおすすめだ。それぞれの山頂では、金峰山と富士山をはじめ、南アルプスや八ヶ岳の山々を見渡せる絶景が待っている。 

■大弛峠から往復2時間の国師ヶ岳&北奥千丈岳登山コース

わずか2時間ほどで前国師ヶ岳・国師ヶ岳・北奥千丈岳の3座が登頂できるコース(国土地理院地図より引用)

コースタイム
大弛峠駐車場 (0:00) →大弛小屋 (0:05) →夢の庭園(0:15)→前国師ヶ岳(0:45)→国師ヶ岳(1:00)→前国師ヶ岳(1:10)→北奥千丈岳(1:30)→前国師ヶ岳(1:40)→大弛峠駐車場 (2:15)
歩行距離:約2.8km
累積標高差:登り 285m、下り285m
合計所要時間:2時間15分

●大弛峠へのアクセス

 中央自動車道・勝沼(かつぬま)IC、または一宮御坂(いちのみやみさか)ICより1時間30分ほどで到着する。山道はつづら折りの道で、一部すれ違いが難しい箇所もあるが、道路はアスファルトで凹凸などは少なく走りやすい。 

 ただし、大弛峠駐車場の人気は高く、限られた駐車スペースは常に混み合っている。特に週末に登山の計画を立てる場合は注意が必要だ。

 筆者が9月の連休中に登山を試みた際、午前3時に駐車場に到着したにも関わらず、駐車できるスペースは残り1台分という状態だった。当然のことだが、満車の場合でも路上駐車は緊急車両通行の妨げになる迷惑行為なので、絶対にNGだ。

 なお、大弛峠はその標高の高さから冬季は通行止めとなる。例年12月1日からとされているが、気象状況等により変動するので、出かける前に情報収集しよう。

■大弛峠から2時間で往復できる国師ヶ岳・北奥千丈岳登山レポ

朝露で輝く苔とキノコがハイカーを楽しませてくれる

●キノコたちと出会う、苔むす木道歩き

 大弛峠駐車場のすぐそばに、大弛小屋という山小屋がある。山小屋の前のテント場を通り抜けると登山口だ。大弛小屋では、宿泊者でなくても山の天然水を汲むことができる。水場の横に設置された箱に100円を支払って、ペットボトルや水筒に汲んでいこう。

 登山道は整備された歩きやすい木道から始まる。両側は木々に覆われており、朝霧が涼やかで気持ちがいい。

美しい樹林帯の中、歩きやすい木道を進んでいく

 苔に覆われた岩や丸太から、さまざまな色や形のかわいらしいキノコたちが顔を見せ、思わず足を止めてしまう。

 歩き始めてから15分ほどで、「夢の庭園」だ。巨大な花崗岩(かこうがん)で形成された景勝地で、自然が織りなす造形美とパノラマ展望が魅力のスポットである。

 ここからさらに30分ほどで、1つ目の山頂「前国師ヶ岳(まえこくしがたけ)」に到着する。その名の通り、国師ヶ岳の手前にあるので「前国師ヶ岳」。ここからの景色がすばらしく、これから目指す国師ヶ岳と富士山のコラボが見られるほか、近くにそびえる金峰山の姿を見ることができる。

前国師ヶ岳山頂にて。国師ヶ岳の裾から、雲海に浮かぶ富士山を見ることができた
足元を彩る可愛らしいキノコたち。ついつい足を止めてしまう