車社会になる以前の「人の暮らし」はどのようなものだっただろう? 現代社会は便利になりすぎ、その様子を想像するのは難しい。だが、往時の暮らしを感じられる古道が今なお残されている場所がある。

 今回ご紹介したいのは新潟から長野を結んだ「塩の道」千国街道(ちくにかいどう)の一部である。実際に歩くと歴史ある趣を感じ、昔にタイムスリップしたかのような感覚を体験できる。また、塩の道を歩きながら、行き当たりばったりで出会う地元の人々やお店に寄り道をしながら、気づくと充実した旅となっていたのだ。

■塩の道って、なんだろう?

古道が残る景色を探す

 「塩の道」とは、海から内陸地へ塩や魚などの荷を運んだ“道”のことを言い、牛方が牛の背に平均50kgもの荷を乗せて歩いて運んだのだ。糸魚川から塩尻までは約120kmと、もっとも長い塩の道とも言われ、6日間ほどかかるそう。道中には牛方の宿が残っている。

 私は小谷村、白馬村大町市を1日散策してみた。話では聞いており知識としてはあったが、実際歩くと面白いことの連続で冒険しているようだった。私の塩の道の旅をお届けしていこうと思う。

■旅のスタートは夜明けとともに

北アルプスの目覚め

 最初から寄り道なのだが、小川村のアルプス展望台で朝焼けのアルプスを見てから1日をスタートした。空気も冷たく、澄んだ朝だった。

 さて、本来の塩の道へ! 小谷村の中土地区の棚田へ向かう、ここには「白月」さんというカフェもあり、コーヒーを飲みながら大きな窓から棚田や妙高方面の稜線や春には桜の景色を楽しむこともできる。私がここを訪れた日は雨だったが、水墨画のような景色もまたよかった。ここを訪れるだけでも癒されてしまう。