早いもので2023年も残りわずかです。登山人気は衰えず、今年も大いに盛り上がっていたようです。山へと向かう目的はそれぞれですが、撮影を目的にして山に登っている人は多いでしょう。デジカメ、スマホのカメラ機能の急激な進化には目を見張るものがあります。SNSの普及によって、撮った写真や映像を手軽に発表できる場が増えたのは喜ばしいですね。

 山岳県である長野県に在住し、仕事やプライベートの合間をぬって非常に精力的に登山、写真撮影を行っている“山歩きインスタグラマー”hykemika_yさんに2023年のベストショットを紹介していただきました。登山を趣味にして常日頃から登っていてもなかなか出会えないような山の絶景、登らないと目にすることができない美しい景色をお楽しみください。

■私の山フォトベスト5

蓮華温泉から白馬岳へ向かう途中、白馬大池山荘前には高山植物のお花畑が広がっています。花が咲き終わった後、チングルマの穂がかわいい!

 2023年も山歩きをしながら沢山の景色に出会いました。私の山選びは登ったことのない山を選ぶことが多いので、初めて出会う景色ばかり。あまり事前にどんな景色が待っているのかリサーチせず、歩きながら自分の思うまま、「あっ、いいな」と惹かれた瞬間にカメラを構えて撮影しています。そうすることで、自分しか切り取らない瞬間や私らしさを表現した、唯一無二の作品になると思っています。今年は40座登っており、その中でも印象深い作品を選んでみました。

●第5位

6月。長野県山ノ内町、志賀高原。「ベニサラサドウダンの花束」が赤石山の登山道を艶やかな深紅に染めていました

 長野県、志賀高原の大沼池を狙って登っていたところ、山頂付近の登山道は風が強かったため、まだ綺麗に咲いたままのベニサラサドウダンの花がドサっと地面に落ちていました。踏むのを躊躇して撮った一枚です。足元にもアートな世界があることに気づいた山行となりました。

●第4位

1月。長野県、美ヶ原高原。「美しの塔」と風の造形“波打つ雪”

 長野県、美ヶ原高原で夜景と朝焼け撮影に。暴風で気温も低かったため、誰もいませんでした。私は一人ぼっちで三脚を雪に差し込んで撮影に挑みました。雪が深く、あちらこちらズボズボと沈みながら歩き回っていました。振り返ると足跡はすぐ消えてしまいますが、それがとても有り難かった。朝日が差し込むと雪が波打つ海のようになっていました。

●第3位

7月。富山県。「早月尾根」から剱岳へ登頂。今年の目標を達成した瞬間

 毎年、自分の目標を掲げる“挑戦の登山”。技術的、体力的にも難度の高い「早月尾根」から富山県、剱岳へ。ずっと天気に振られて行くことが叶わなかったのですが、今年は天気にも仲間にも恵まれ最高の1日になりました。この素晴らしい景色を見るべく、この日まで待ったのだと確信できました。

●第2位

10月。新潟県。モルゲンロートに染まる越後駒ヶ岳。「明神峠」から紅葉越しに狙いました

 新潟県、越後三山の一つ、越後駒ヶ岳へ。なかなか行ったことのない山域でした。タイミングがよく冠雪した山頂と紅葉を見られてとびきりラッキーでした。三段紅葉の時期は、天候やタイミングが難しいといつも思っています。そんな中で晴れた日に見ることはとても希少ではないでしょうか。明神峠の雲海も素晴らしかったです。

●第1位

2月。長野県。仙丈ヶ岳「地蔵尾根」から見た鋸岳。“燃えるmountain”

 南アルプス北部、仙丈ヶ岳。厳冬期の過酷な条件の中、日の出の時間に山頂には間に合わず、悔しい思いをしながらも尾根から横を見ると鋸岳が爆焼けしていたご褒美の一枚。もう二度とここまでの辛い思いをして撮ることはないのではないかと思います。