なにもない荒野だった場所を整備すること、1年。そして、さらにもう1年のプレオープン期間を経て、ついに今月14日“理想のサウナ村”こと「THE WATERS」が、本オープンを迎えようとしている。
ここでは、様々な試行錯誤を重ねてきたプレオープンの1年間を、施設の発起人であり、オーナーを務めるユーコンカワイさん自身に振り返ってもらった。
■リトリートの本質とはなにか
プレオープンの1年を通じて、僕なりに見えてきた所感がある。
春は実戦を通してオペレーション力を磨き、夏は円原川の水の凄さを証明し、この場所の可能性ははっきりと見えた。しかし、四季はまだ半分残っている。秋と冬。ここからさらに、「リトリートの本質とは何か?」を模索する日々が始まった。
リトリートとは、何かを足すことではなく、余計なものを削ぎ落とすこと。自然の中に身を置いたとき、人が勝手に自分の真ん中に戻っていく、そのための“余白”を整えること。秋と冬は、その答え合わせの季節だった。
◼️秋 ── ベストシーズンの到来
自然共生のアウトドアサウナに固定値はない。その日の気温、湿度、風、水温の変化に合わせて、薪の入れ方や蒸気の扱いを毎回微調整しなければならない。
秋は外気と水温のバランスが最高だった。外気・水温が同じ13℃で並んだ時、その心地よさは最高点に達した。水、外気、火、静けさ。どれを取っても過不足がない。
黄色く染まった紅葉に光が差し込むと、世界がキラキラと輝いた。毎日その場にいる僕ですら、飽きのこない居心地の良さ。まるで、俗世とは切り離された異世界の住人になっている気分だった。
「秋が一番好きかもしれない」
体験者からも、そんな声が自然と増えた。やがて口コミも広がり始め、遠方からも多くの人が訪れる場所になっていた。
◼️火と陰影が深めるリトリート
秋は16時を過ぎると、あたりが一気に暗くなり始める。ささやかなライトを設置し、ソーラー充電のポータブル電源で、ほのかで素朴な灯りをともす。光が強すぎないことで、むしろ陰影が際立つ。立ち上る湯気、火の揺らぎ。自然の輪郭がやわらかく浮かび上がる。
寒くなってきたので、焚き火のテストも始めた。サウナで緩み、川で締まり、焚き火で柔らかくほどける。火は単なる暖房ではない。人と人の距離を縮める装置でもある。炎を囲むと、自然と語らいが生まれるのだ。
蒸石焼き芋も始めた。サウナストーンの中にさつまいもを入れ、じっくり低温で蒸していく。体験も終わりの時間に近づくと、ほのかに甘い香りが漂い出す。焚き火を囲みながら、柔らかく甘みの増した芋を、ハーブティーと共にいただく。否応なく頬が緩む。
特別なことは何もしてない。でも、自然の力を借りた深い深いリトリート体験。秋は、静かに深まる季節だった。