「北奥千丈岳(きたおくせんじょうだけ)」と言われてピンとくる方は、なかなかの登山好きとみた。
この山は奥秩父山塊の1つだが、主稜線から少々外れているからか、百名山や二百名山には選ばれておらず、登山者のあいだでも知名度はあまり高くない。かろうじて三百名山には名を連ねている程度で、金峰山や甲武信岳など、周辺の人気の山に隠れがちな地味な存在である。
しかし、標高2,601mとじつは奥秩父の最高峰は北奥千丈岳であることは、あまり知られていない事実。首都圏からも比較的近く、山頂までは約1時間登るだけと手軽さも魅力。さらに、山頂からは360度ぐるりと見渡せる眺望抜群な隠れ名峰なのだ。
■初心者でも気持ちよく歩けるアクセスの良さ
登山口となる大弛峠までは、中央道の勝沼ICから1時間半ほど。公共交通機関はなく、マイカーかタクシーでのアクセスのみ。シーズン中は早朝から駐車場が混み合う。ルートタイムが短いからとのんびりしていると、駐車場で思わぬ待ち時間を過ごす危険もあるので、特に週末は早めの行動をおすすめする。
登山口となる大弛峠の標高は、すでに2,360m。じつは日本の車道最高地点である。ここから山頂までの標高差250mほどを、1時間ほどかけて登っていく。
歩き出しの登山道はよく整備された木道で、しっかりとした階段もあって非常に歩きやすい。早朝や雨の後はスリップに注意しながら歩けば、特に危険な箇所もなく、初級者でも気持ちよく歩けるはずだ。
登りの途中で後ろを振り返ると、金峰山と山頂に続く稜線の展望が開けてくる。山頂のシンボル、五丈岩もはっきりと見える。目を凝らしてさらに奥を見れば、南アルプスの山々も見えている。