日本百名山、花の百名山にも選ばれる名峰・金峰山。富士山や八ヶ岳を見渡せる山頂からの大展望や、山のシンボルとして存在感抜群の巨岩・五丈岩、まるでアルプスの高山のような特殊な植生など、書ききれないほどたくさんの魅力を持ち、奥秩父の中でも特に人気を集める山として知られています。

 登山ルートとしては、西の瑞牆山(みずがきやま)方面から登るか、東の大弛峠から、はたまた北の小川山方面からの3つの主要ルートがあり、体力レベルに合わせて選べることも人気の一因となっています。しかし、じつは金峰山の南面にも、今ではほぼ歩かれていない幻の古道が存在することはあまり知られていません。

■忘れられつつある参詣の道「御嶽道(みたけみち)」

美しい森歩きも、この道の魅力の一つ

 金峰山は、古くから山岳信仰の対象として登られてきた山です。山頂の五丈岩は山麓にある金櫻神社の本宮とされており(たまに岩に登っている人を見かけますがダメですよ!)、かつては多くの山伏や修験者たちが参詣していました。その際に、彼らが歩いた道は現在の主要3ルートのいずれでもありません。じつは、南面に神社から山頂へと繋がる表参道とでも呼ぶべきルート「御嶽道(みたけみち)」が存在します。

 現在も通行することは可能で、道中には水晶の採掘が行われていた水晶峠や、片手廻し岩をはじめとする神秘的な岩々など見どころも多く、静かな山歩きを楽しめる登りごたえ抜群のルートです。しかし、主要ルートよりも標高差や行動時間が長いことや登山口までのアクセスがネックとなり、今や忘れられつつある古道となっています。