■なぜ、こちらを山梨百名山に選ばなかったのだろう?
樹林帯を抜け、あたりに岩が目立ち始めたら、すぐに前国師岳(2,570m)の山頂に辿り着く。山頂周辺からは、富士山もどどーんと姿を表す好展望地だ。
この山頂の先に三又の分岐があり、山梨百名山に選ばれている国師ヶ岳(2,592m)、そして北奥千丈岳(2,601m)までは、それぞれ5分ほど。
まずは、国師ヶ岳へと向かってみよう。こちらは山梨百名山や花の百名山にも選ばれている奥秩父最大の山体を誇る山として、その名をよく知られている。しかし、南東側に開けた山頂から眺望は富士山こそ見えるものの、西側が北奥千丈岳に阻まれていまひとつである。
その点、すぐそばの北奥千丈岳は非常に眺望がいい。奥秩父最高峰ということもあり、晴れた日には360度の大展望が開ける(撮影日はあいにく、ガスが広がっていたが)。
転がる岩々に腰掛け、のんびりと過ごしていく登山者が多いのは、居心地の良さの証拠だろう。
大弛峠までの林道開通以前は、奥秩父でももっともアクセスが難しい奥深い山の1つだったそうだが、その条件は国師ヶ岳もほぼ同じ。2つの山に足を運んでみた結果、個人的には北奥千丈岳に軍配を上げたい。
「なぜこちらを山梨百名山に選ばなかったのですか?」
ぜひ、その理由を選者に聞いてみたい気持ちになった。
■歩き足りない方は、金峰山とセットでどうぞ
北奥千丈岳に登るなら、国師ヶ岳とセットで周辺を散策してのんびり過ごすことをすすめたい。しかし、往復2時間少々のルートじゃ物足りない、せっかくここまで来たらもう少し歩きたいという方は、早出して金峰山と組み合わせて登頂を目指すのもいいだろう。
よく登っている方に聞くと、先に金峰山を往復して余力があれば国師ヶ岳&北奥千丈岳も、と考えると金峰山からも峠に戻ったタイミングで面倒になって登らなくなる方が多いそう。朝イチに国師ヶ岳&北奥千丈岳に登ってから金峰山を目指す、という順番にした方が連続登頂成功率は高いらしい。
スタートの標高が高いので暑い時期に便利な選択肢となるが、これからの紅葉シーズンも気持ちがいい稜線歩きが満喫できる。大弛峠に至る林道は毎年冬季閉鎖があり、11月半ばの週末で閉鎖される予定。今年も楽々と奥秩父最高峰の大展望を楽しめる猶予は、残り2か月ほどとなっている。