■濃い魚影、ニジマスたちの強烈なファイト! でも釣れない時間も悪くないです

霧が立ち込めると幻想的。さざ波や小雨がパラつくくらいの方が魚たちの反応がよかったです

 6月も終わろうとするある日、朝8時の気温は15℃、水温は12℃で、この時期としては少々冷え込んでいました。放流されている魚はニジマス(レインボートラウト)です。公式サイトでニジマスは40〜60cmと謳っていますが、魅力はサイズだけではありません。麓の養魚場育ちのニジマスは魚体も美しく、整った天然モノと見間違うくらいの魚もいます。

立派な体躯のニジマス。ヒレの張ったコンディションのいい魚たちが多いです
太いニジマスは引きごたえも十分ですので、ある程度強いタックルが必要です

 魚たちは筋肉質で、当然強烈なファイトをしてくれます。激しくジャンプしたり、水中に引き込まれそうなほど走ったりとスリリングなやり取りとなります。魚影の濃さも特筆すべきで、桟橋から覗くと足元に悠々と大型の魚たちが泳いでいます。とはいえ、釣り堀のように簡単に釣れる訳ではありません。

 取材日は周りの河川が増水していたせいでしょうか、朝一番から桟橋やウェーディング(立ち込み)ゾーンまで多くの釣り人で賑わっていました。しかし、誰かに魚がかかるのは、平均すると30分に一度程度でしょうか。やはり無風晴天より、霧がかかったりさざ波が立っているタイミングでロッドが曲がっていることが多かったです。

 遠慮しあっているように交互に囀るウグイスとホトトギスたち。高原の風を感じながらの釣り時間は、至福のひとときです。

■ついにきた! 念願の大イワナ

体長45cmの見事なイワナ。野趣溢れる満足の一本でした

 さらに、以前放されていたというイワナも数は少ないですが泳いでいます。筆者は年に数回訪れていますが、ずっと気になっていたのがそのイワナです。管理釣り場とはいっても広い環境で生活しているせいでしょうか、ロッドを振る手を止めてじっくりと観察していると、周りのニジマスたちに負けない50cm前後のイワナを確認することができます。

 ニジマスを数匹釣った後、じっくりと水底に沈めたフライをじわりじわりと引いていると、ためらうような鈍いアタリとともに、重々しく身をくねらせる感触が伝わってきました。「もしや!?」と思って徐々に手元に寄せてくると、なんとも形容し難い渋い色合いの魚体、特徴的なヒレの白い縁取り。イワナです! なんとしてでも取りたい気持ちが高まり、急に緊張が走ります。ロッドを持つ手も震えつつ、差し込んだネットもおぼつかないまま、気づけば無事に釣り上げることができました。

 午後に入り、それまで南の空に遠慮がちに覗いていた青色がいつしか大きく広がっています。風もすっかり落ち着きました。どちらが本当の空かわからないような水鏡の世界。澄んだ青空にのびのびと浮かぶ白い雲。水中に帰っていくイワナの尾ビレを見送った後にはドラマチックな光景が広がっていました。