豊富な知識と経験を持ち、日々たくさんの登山やキャンプ道具と接しているアウトドアショップの店員さんに、いま注目の製品を紹介していただくシリーズ。今回は、アルペントーキョーの鈴木正志さんに「登山の便利アイテム」をテーマに、「ポータブル浄水器」のおすすめを選んでいただきました。

■ポータブル浄水器の話題性が高まっている

 「実は、ポータブル浄水器が近年けっこう話題になっているんです」と鈴木さん。ポータブル浄水器のおすすめ製品をうかがったときの第一声がこちらでした。

 話題になっている要因として考えられるのは、ひとつは「エキノコックス症」ではないかということです。これは、エキノコックスという寄生虫が原因で肝機能障害などを起こす病気のことで、エキノコックスが寄生したキツネや犬などの糞に触れたり、糞に汚染された水を飲んだりすることで感染すると言われています。

 以前は、北海道での事例が多かったそうですが、「近年は本州を含めてその範囲が広がっていることもあり、人々の意識も高まっているようです」(鈴木さん)

 もうひとつの要因としては、災害対策です。断水して飲料水がないときなどに備えて、ポータブル浄水器を準備しておこうと考える人が増えているのでしょう。

■ポータブル浄水器は評価の高いものを選ぶこと

 登山をはじめ、アウトドアでは川や池などの水をむやみに飲んではいけないという基本があります。というのも、先のエキノコックスのように、どんな病原菌が潜んでいるかわからないからです。

 ただ、登山中に、どうしても川の水などを飲まなければならない状況になってしまう事態はありえます。そういったときに役立つのが、ポータブル浄水器なのです。

 ポータブル浄水器を選ぶときは、やはり評価がしっかりとしている製品を選ぶこと。鈴木さんが挙げてくれたのが、カタダインの「ビーフリーAC 0.5L」です。カタダインはスイスのメーカーで、世界トップクラスの浄水器ブランドです。

カタダインの「ビーフリーAC 0.5L」

■2段階のフィルターで細菌を除去する

 ビーフリーACは、ボトルの中に汚れている水を入れて、フィルターが一体になったキャップを取り付けて飲むだけというシンプルな仕組みになっています。このフィルターが重要なポイントで、「ホロファイバーフィルターと活性炭フィルターの2段階で、しっかりと浄水してくれます」(鈴木さん)

ホロファイバーフィルターと活性炭フィルターでろ過する

 ホロファイバーフィルターは、0.1μm(0.0001mm)という小さな無数の細孔を持った中空繊維で、水中の微生物を99.9%、バクテリアを99.9999%除去するという高い能力を備えています。ボトルに水を入れて強く握ると、その圧力によって水がフィルター孔を通過。微生物や細菌はホロファイバーフィルターで遮られ、浄化された水だけが活性炭フィルターに送られて、イヤなニオイや塩素が軽減されるという構造です。

 性能も確かなもので、「泥水のように濁っている水でも、しっかり色が取れます」(鈴木さん)。ただし、化学物質やウイルスなど除去できない物質もありますから、その点は注意しましょう。

■使わないときはコンパクトにしまえる

 飲み口となる部分は、シリコン製のマウスピースを採用していて、口当たりも良好。キャップの開閉も安定しているので、こぼれる心配もありません。

シリコン製のマウスピースを採用していて飲みやすい

 ボトル部分はTPUと呼ばれるポリウレタン素材を使っていて、耐久性と柔軟性に優れています。ボトルの底はマチのない形状なので、使わないときはコンパクトにまとめてバックパックのサイドポケットなどに入れておけます。

 ちなみに、ビーフリーAC には容量1Lタイプも用意されていて、こちらは丸底形状となっています。使い方に合わせて、選択するといいでしょう。