全国各地で気温が上がり、雪や凍結によって冬季通行止めとなっていた道路が開通して、登山口まで容易にアクセスできるようになってきた。登山者としては嬉しいかぎりだ。

 そこで筆者はこのタイミングで奈良県の「八経ヶ岳(はっきょうがたけ)」へ登山に出かけた。八経ヶ岳へはいくつか登山ルートがあり、「弥山(みせん)登山口」からが日帰りも可能な最短ルートで、往復6時間程の行程だ。登山口までは4月5日に冬期通行止めが解除された、国道309号線を通ってアクセスすることができる。

 国道309号線は例年12月中旬から4月初旬まで冬季通行止めのため、約4か月ぶりの開通となる。今回はその様子を紹介していく。

■日本百名山で世界遺産の「大峰山(おおみねさん・標高1,915m)」

 奈良県南部に位置する「大峰山(おおみねさん)」は、女人禁制の「山上ヶ岳(さんじょうがたけ)」をはじめとした山々の総称で、古来より修験道の地として知られている。また、日本百名山の一つで、南北に通る縦走路は「大峯奥駈道(おおみねおくがけみち)」と呼ばれ、世界遺産に登録されている。

 「八経ヶ岳」はそのなかで標高1,915mと最も高く、近畿地方の最高峰でもある。山頂からは大峰の山々が眼下に広がる雄大な絶景を楽しめ、多くの登山者が全国各地から訪れる人気の山だ。

■弥山登山口から世界遺産の森を歩いて行く

弥山登山口の駐車場は早朝にも関わらず多くの登山客で賑わっていた(撮影:酒井 天里)
弥山登山口から30分程で現れる苔の森(撮影:酒井 天里)

 早朝7時頃に、弥山登山口の駐車場に到着。登山の準備をしていると、続々と車が来て30分後には100台停められる駐車場が満車となっていた。大峰山の人気ぶりがうかがえる。

 7時40分に登山開始。登山道は歩きやすい道から始まるが、すぐに急勾配の道へと変わっていく。大きめの石がゴロゴロとして崩れやすいので慎重に歩く。30分程歩くと、苔むした美しい原生林の風景が広がる場所に出た。

弥山登山口から1時間程で大峯奥駈道と合流する(撮影:酒井 天里)
聖宝ノ宿跡には修験道再興の祖である聖宝理源大師の像がある(撮影:酒井 天里)
聖宝ノ宿跡から少し歩くと木々の間から雪渓が見えた(撮影:酒井 天里)

 更に30分程歩くと山上ヶ岳から続く大峯奥駈道との合流点に到着。この先は「聖宝ノ宿跡(しょうぼうのしゅくあと)」まで1時間程、起伏の緩やかな道が続いていく。

 「聖宝ノ宿跡」から「弥山小屋」までは再び急勾配の登山道が1時間程続くので、息を整えながら慎重に進む。その途中木々の間から谷に残る雪が覗ける場所を発見した。最近まで雪に覆われていたこと、そして、大峰の雪深さがうかがえる。