5月は残雪を抱いた山々の遠望の美しい季節ですが、じつは景色以外にもこの時期の山ならではの楽しみ方があります。
それは、足元や樹上に芽吹き始める愛らしい春の花々。山の上には、街よりも少し遅れて春がやってくるので、5月に入っても標高やエリア次第で、まだ春の花を楽しめるのです。
足元に咲く春の花々を紹介した前編に続き、ここではこの時期の中低山の樹上に見られる春の花々をいくつか紹介してみましょう。小さな花が多いので、山頂や遠くの景色ばかり気にしながら登っていると、つい見逃してしまいますよ。
■春山の樹上に咲く花々
春の山は足元に咲く花が多い季節ですが、樹上に咲く花々もあります。
なかでも、周りの木々が芽吹く前にいち早く花をつけ、山に春を告げる存在がキブシです。
黄色いフジの花のような房状の花で、乾燥に弱いので湿った沢の近くでよく見られます。
キブシの花に続いて、林道沿いや崖地で咲くのがヤナギの仲間。
猫のしっぽのような可愛らしい見た目で、樹高は10m以上にもなります。生えている場所によって、ネコヤナギ、バッコヤナギ、タチヤナギなどがあり、ネコノメソウ同様、非常に似ているので分類が難しい。
同じく、アブラチャンの黄色い小さな花も春の早い時期に山肌を彩ります。
「チャン」とはコールタールを意味する言葉で、油分をよく含み、生木でもよく燃えることに由来しています。枝を折ると、クロモジと同じような爽やかな香りがすることも特徴。
桜が咲き終わると、次はツツジの出番です。
山では、ミツバツツジ、ヤマツツジ、シロヤシオ、アカヤシオなど、さまざまな種類のツツジが見られます。 5月のツツジといえば、奈良の大和葛城山、丹沢の檜洞丸、群馬の赤城山などが人気スポットとして知られています。